深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

走り書き/言葉・35

「巧みな言葉遣いだな」と感心する。 しかし、わたしには結局、遠い。 安楽椅子に座して、皮肉の1つも言おうとすれば、技巧は駆使できるもの。 今も血肉となる言葉は、渦中にありながらの、闘う走り書きなのだ。

世界は寒い2012/地声で・7

流されてきた位牌も、波打ち際で洗われた。 食欲は失せても、温かくしていよう。 身心を温めてくれるスープが、今日も必要なのだ。 春が来ても、寒いままの状況は続くのか。 3月11日へと進む朝がまた、始まる。

休日には戯言/些事の日々・55

「おじさんの一生?」 近所の子に問われ、困惑した。 「まだ生きているのに、何故聴くのさ?」 「だって、長生きしているし」 「よく働いたが、貧乏、笑いは手放さなかったで、どだっ」と自棄糞で笑い飛ばした。

恋は乞い/望郷・1

恋する女から漂う密林の気配。 おれは薄い空気の中、倒れそうだった。 とっ捕まれば分かるはずだ、捕まるような運動性は拡がらないと。 女の発生に惹かれた男にとって、路上で布団を敷くことは望むところだった。

立つ、歩く/地声で・6

人が人の形を奪われ、胴体は喰いちぎられた。 わたしも顔色を失ったままだ。 街角では、子どもらが手を叩き笑う。 いつも歩き出すしかない。 暮らしは困難だが、断定から遠く逃げ、受容しては歩き続けてゆく。

なんである、アイデアル(飛び立つ)/些事の日々・54

お金で買える愛もあれば、買えない愛もある。 同様に愛である愛もあれば、愛ではない愛も。 では、愛とは何? 定義できる愛もあれば、定義できない愛もある。 曇天の下、鳥たちはいつもの如く、ふいに飛び立つ。

人生相談/地声で・5

わたしたちも、何処で暮らせばいいのでしょう? 中には外国へ引っ越した方も。 安全な場所はある? 首都圏3千万人超の避難場所、いや、居場所を、ぜひご教示ください。 (東京都チェルノブイリ市在住・会社員)

死を生きる/天下の太極拳ヨーガ野郎・1

我、他者と関係する、故に我在り。 太極拳やヨーガを時折行うが、相変わらず他者としての自分の身心は硬い。 だからか、死をも生きようとするメソッドを続けるのは。 死という身心の固形化まで呼吸を深めてゆく。

冬の花/地声で・4

曇天の下、どれほど歩いてきたか。 まだ楽しめない、楽しむつもりもないけれど。 ただ、嬉しいときがある。 どうしたわけか、ステップさえ踏む。 例えば冬に咲く花の、息を呑む率直な美貌ぶりとすれ違ったとき。

合掌・25/地声で・3

生き延びようとする者が成し得ないことを、お前はやり遂げた。 完全な死体になれたのだ、無事、生き返りもせず。 ひと安心だな。 煩わしいたらありゃしないことは続くが、おれの死に際は見守れ、雲海から。 合掌

まるでディランの如く/地声で・2

相変わらず否定の言説、しかも命令口調なんだね。 まるでヒステリックな小心者のようだよ。 ほら、男の中の男、強いんだろう? 今日は解放の言葉を語るんだ。 自由を存分に味わったときのことを話し始めようか。

草の道で/些事の日々・53

子どもらが近隣の地図を描いた。 「違う世界で生きているんだな」 わたしも倣い紙を広げる。 犬の道や抜け道でなく、図書館や飲み屋を記せば了であったが。 紙の上でも道草を食うことができ、すっかり浮かれ者。

男の子たちに/地声で・1

夜道が物騒だからといって棒なんか持つことはない。 ほら、ぐるりを、月の光が微かだけれど、明るくしてくれているよ。 逃げ道はいつか見えるさ。 怖いものがいるとしたら、棒を手にした途端、現れるものなんだ。

鼻唄の季節はまだか/言葉・34

春の息吹を強引に感じようとする寒い朝。 「言葉があるから世界に対峙できる」とも体感していた。 ただ、悪しき教条的な定義主義に身心は奪われまい。 言葉に欲情はするが、順を追って発情するわけではないのだ。

チョコレートな夜に/些事の日々・52

路上で啜り上げる女性。 涙を流していることが窺えた。 ただ、彼女の哀しみの原因同様、何故、切ないと涙が出て泣くのか、「見当がつかないな」と。 雨は降り続け、急ブレーキの音が冷徹に鮮明な夜のことだった。

塵芥/言葉・33

厄介な塵芥が舞い、「どうしていこうか」と。 「降り積もる時間こそ共有していきたいな」 体験できる言葉を希求しているのだ、眼前の意味が変容化してゆく。 お茶を飲み終えたら長居は無用、席を立つ日々に――。

長く感じてきた/些事の日々・51

収容所で暮らしている気分と言えば、あるいは怒られるだろうか。 希望はついに焦げついてしまっているが、一般化の罠には留意している。 吐き気がしても、事実は見据える。 前ではない、真正面へ向かおうと思う。

北風と太陽2012・2/些事の日々・50

プールの脱衣場、着替えがうまくいかず、寒くて泣き出す男の子。 父親は怒るばかりで、着替えの途中、外へ連れ出してしまう。 泣き止む気配が漂い、観れば母親の腕の中。 父親はやはり困惑、ただただ惚けている。

北風と太陽2012・1/些事の日々・49

蓄えはない。 今、ぶっつけ本番の百文字を記そうとしているのに似て。 余裕もない。 残酷な童話、いや、童話の残酷さに似て。 あるのは、そう、あるのは強欲な突風の中で座り続ける、弱さに基づく屈託の強さだ。

あなたの形をした春を待っている/合掌・24

クリスマスの後に初詣、今、雛祭も待つ。 ただ、神仏への信仰心はなく、いい加減なものだが、悪びれることはない。 そのくせ毎朝、手のひらを合わせることは欠かせなくなった。 昨春からは、なおのこと。 合掌

うわさの男2012/合掌・23

仏壇の水を替えていた。 「生きている今を、不老不死の状態と思い込めれば、死も楽しみになるだろうか」 益体もない言葉が飛来する。 マッチを擦り、火をともす。 線香の煙が鼻をくすぐり、くしゃみの気配――。

火の馬・オートバイで/オン・ザ・ロード2

脚を高く上げて、素早く跨ぐ。 熱いエンジンが震え、「出発だ」と伝えてくる。 目的地はない、それでいい、それがいい。 走ることを走るだけだ。 消えたものは戻りゃしないが、流儀を通すやり方で行くしかない。

足を出す・足が出る/身体から・60

夕暮れ時の雑踏で、人前に出た後、のんびりと歩く人々。 太陽の残滓が貧しい。 身体を運ぶ精神、精神という身体、身体という精神、精神を運ぶ身体。 今日は返すものがあるのだ、追い抜こうとせず足取りを速める。

マネー・マネー・マネー/状況から・41

強制的に身代金をふんだくる。 しかも、立ち行かないから、「もっと寄越せ」とは。 わたしのせこく軽薄な放蕩は、知れたもの。 愛する人に思いを込めたプレゼントをするかの如く、有頂天の納税はできないものか。

立ち上がってゆく/言葉・32

根源的な発言なる行為も、食生活が概ね成立できているから可能なのだ。 その一方で、喰えないからこそ言葉にしてゆく姿勢。 あるいは、保障・保証されていない場所での言説。 わたしが惹かれる場所は長く明白だ。

セクシーだなんて/老道・3

感謝の言葉は美しい。 使い方で、人生も変化していくだろう。 こうしたことを言うほどには、人並みの辛酸に貫かれてきた? 実際、セクシーな立ち居振る舞いよりもありがたいこと・ものが、今も増えていくばかりだ。

ごめんソーリー/状況から・40

大震災の前と後にも暮らしへの震災。 その集積に耐えられなくて当たり前だ。 母なる胸・父なる腕、そうして子どもなる身体を大人たちにも! 内・外部被曝を生活習慣病で括ってはならない。 一件落着はごめんだ。

竹中労エピゴーネンみたいな/些事の日々・48

こんなふうに言ってみようか。 1人だから力があるのではない、力があるから1人なのだ。 こうも言おうか。 力があるから1人なのではない、1人だから力があるのだ。 勝手に寂しいが、群れるつもりは今もない。

本を造っている/些事の日々・47

日々、目次を記しているかのよう。 表紙には文字が浮かび上がっているが、今日も判読できない。 索引は成立せず、栞は手元にないままだ。 ページ数の予測はつくが、未決定。 奥付にはせめて、日付がないといい。