深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

構うものか/還暦百番勝負・28

情けなく、みっともない上に、無力で後悔だらけ。 自己憐憫ではなく、ただただ途方に暮れるばかり。 が、嘆いていてもしょうがない。 螺旋状に下降していく、落ちていく。 構うことなく、ステップを踏んでいる。

休日の一家分散/還暦百番勝負・27

休日の3人。 1人は仕事、もう1人は町、残りは机の前へ。 3つの点は重なることはないが、拡がりが芽生えてゆく。 まるで身体が拡張したかのよう。 夜になれば3つの点は新鮮に、食卓という1点に向かうのだ。

根本へ/マザーネイチャー・9

1本の木とともにある1日。 見上げても見下げても、いつもあるのは目の前だ。 どこへ行けばいいのか、静かに語りかけてくる佇まい。 実は木を訪ねて行くことが旅。 深くふかくのびていく根も感じられるのなら。

今もなお/還暦百番勝負・26

引きこもりに差別主義、秘密保全法に原発問題。 首切りに宿なし、自死に孤独・孤立死も。 医療崩壊に無縁社会、家族解体に年金破綻さえ。 今も次々の事態。 強風の中、わたしは子どもらと石蹴り遊びをしている。

這っていく/還暦百番勝負・25

焦ることはなかったのだ。 慌てて当然の状況は今こそと、今も。 むかつくという存在証明さえ牧歌的と、身心を撃つ声。 下降の意志さえ遠く、単に落ちている。 が、沼地だろうが、かかとをつけて歩いてゆくのだ。

相性が合うから相棒/月下の貧乏人・20

なろうとして仲良くなったわけではない。 初めは周囲を巡礼、気づけば連れ立って歩いていた。 テーブルを前に、ともに食べ、呑み、笑う。 窓の外、月が浮かぶときには唄さえ口ずさみ。 相性と言うしかない交感。

出逢うということ/ラブソング・59

気づく、出逢ったと。 互いが互いの疾風となったのだ。 お前がおれに、おれがお前に入り込み、ついにおれたちへと出て行った。 薔薇に潜む沼地、夜に逃げた香気も発生させて。 理解したのは無論、後刻のことだ。

生きる2013/この領土で・262

老いた人が思う。 「何か提供できるものはないのか」と。 「いらないものではなく、必要なものを送りたい」とも。 結果、自らを運ぶことに。 戦時下の体験を少しずつ語り出したのだ、同じ時代を生きる者として。

名月/月下の貧乏人・19

暗い表情の男が歩いて来る。 振動したのだろう、携帯電話を取り出す。 「何だよ、何だって?」と大きな声を。 電話の相手に促されたのか、夜空を見上げる。 そうして、「あっ」と声を発して、押し黙ってしまう。

日暮れの街で2013/娘と・84

娘と買い物へ。 手にした紙には購入品のリスト。 顔を出す店の順番を、まず決めた。 風が強く吹き、足取りは覚束ない。 レジで、「ありがとうございます」と言われるたび、娘は唐突に頭を深くふかく下げていた。

あらためて/還暦百番勝負・24

小さき者たちの、ささやかなる願いに囲繞された。 目立たず融和感に満ちた想い。 涙が笑いに転ずる今・ここへの恋慕。 身に沁みていく、脳髄が丸ごと溶解して。 遠くまで行くことがなくていいとも知った、一瞬。

呼吸・44/ラブソング・58

虹を探し当て逢いたいわけではない。 ましてや名所旧跡で。 名もなき路地で、道端で、路上で一向に構わない、逢えるのなら。 座り込んで話そう、あれからのことを。 何より、今もまだ、呼吸ができていることを。

爪2013/還暦百番勝負・23

爪はのびる。 寝込んだとしても、生きていれば。 「何でこんなときに切らなければいけないのかな」と苛立ちの人。 「命が生えてきているんじゃないか」 ともに苦笑いして、窓の向こう、夏の終焉を見詰めていた。

狂気2013/還暦百番勝負・22

狂気。 それ以外の、個体への望ましい破壊が何故できないのか。 こわばりや、くぐもりもなく。 無意味だが笑うことはでき、死に理由を求めず、意味付与もしない。 ちょっと角を曲がる感覚で、消えていいのだが。

行きたいとは思わないが/還暦百番勝負・21

時速数キロメートルで、歩き続ける。 生きている間には無理でも、月にはいずれ着くだろう。 月が、距離が、希望があるのなら。 今や未来への距離が消失、過去も粉飾決算。 永久の今ここにすがっているかのよう。

労働に押し寄せる締め切り/還暦百番勝負・20

半日はかかる労働。 が、残された時間はごくわずか。 「どうする?」と自らに。 放り投げるか、立ち向かうか、あるいは手を抜くか――。 結果、猪突猛進は避け、収支は棚上げ、返す当てなく手を借りたのだった。

青い鳥2013/幸福論・13

幸せを願う――。 力点は願うことに置く。 そも、幸せに幸せをもたらす力があるのかどうかは疑問だ。 幸福病といって悪ければ、幸福症候群。 身近な青い鳥を逃がし続けても、多幸感に包まれる方途はないものか。

「循環していくんだ」と呟く/還暦百番勝負・19

限りなき進歩という視点自体の限界。 そも、資源は有限、労働力も。 広大な森もまた、矮小化されている。 清貧という鈍い余裕からは逃げて行こう。 小さくでもなく、大きくでもなく、ゆっくり循環していくのだ。

悲しみとともに/手仕事・6

1世紀を生きた方が語る。 「手仕事で夢中になれるものを養っておくといいですね」 「乗り越えていくことができますから」とも。 ふと観れば、仏壇にはいくつかの位牌が。 線香の匂いが、微かに漂ってきていた。

亡き人々と一緒に歩いている/ラブソング・57

あなたの考えを変えたいとか、そういうことじゃあないんだ。 ただ、歩きたいだけ。 銃弾で逝った人々が今も手を取り、「一緒にいるよ」と誘ってくれている。 風はますます強くなるさ。 さ、歩き続けていこうか。

見かけたんだ/還暦百番勝負・18

歩道を歩いていたときのこと、「えっ?」と。 声をかけることもできず、バスに乗り込んで見えなくなってしまった人。 長く逢っていなかった…。 しばし立ち尽くし、歩み出す。 生きていた、十二分、嬉しかった。

老いた象と陽を浴びた/還暦百番勝負・17

視界にまず飛び込んできたのは皺だ。 皮膚が示す生命の地表図。 彼女はのっそりと歩き、素早く水を含む。 陽射しが差し込む方角をのんびりと眺めながら。 そのときだ、巨体からの鼓動が静かに伝わってきたのは。

西荻天使の詩/還暦百番勝負・16

風が強い日、空から、大きな羽が舞いながら、落ちてきた。 手に取ろうとすると、ふわりと遠ざかっていく。 「何の鳥のだろうね」 「もしかして天使だったりして?」 わたしたちは笑いながら、内心ギクリとする。

席を立つ理由/還暦百番勝負・15

願いは長寿だったはず。 が、到達した超高齢社会は単純には寿がれていない。 むしろ、不安や憤り、否定の対象に――。 そうした折、電車の中で咳き込む高齢者が席を立つ。 眼前の年長の高齢者に場所を譲るため。

ホクロ/プール絶景・11

あなたの脚の、目立たぬところ。 実は大きなホクロが1つある。 「そうなのよ」と、屈託の声で。 親が気にしていたことを、「とてもよく覚えているわ」。 「75歳になったのに、今でもよく」と、今度は笑顔で。

病の告知だなんて/還暦百番勝負・14

緊急でないのなら、決断しなくていいときもある。 だって、できないことがあるもの。 例えば人の生き死に際しての難問。 設問自体をガラリと変えるしかない場合も。 例えば流されるか、流されまいとするかとか。

忘却の果て/還暦百番勝負・13

悲劇を忘れまいとする人。 逆に忘れて生きていこうとする人も。 忘れるなと語る方もいれば、思い出せないことの絶望を話す方もいる。 ただ、多くは平和ボケ? 何度でも言いたい、戦争ボケよりいいではないかと。

あらためて出逢う/還暦百番勝負・12

旧友たちと集えば、尽きぬは思い出話での笑い声。 が、途切れる一瞬が。 空虚で空漠たる空白? いいや、今、わたしたちが出逢い直すべき場所。 見知らぬ顔同士として出逢い、再会を祝し合う拡がりの場所なのだ。

食卓慕情・6/還暦百番勝負・11

大家族の桎梏から夢見られた、マイ・スイートホーム。 今や消費社会を助長するばかり? 「分断こそ儲けにつながる」とは、誰の考えだったか。 暑いあつい夜の夜。 人と分け合い食べることこそが生きがいだった。

次の手を打つ/還暦百番勝負・10

労働や食事、趣味や会話。 演技や勉学、排泄や運転――。 あれにこれ、それと、悩みは尽きることがない? ポケットから手を出し歩き出す。 空を眺めながらふと、「手に起因する悩みが多いのかもしれないな」と。