深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

かじかむ手元を見つめた/この領土で・68

寒風の屋外、コーヒーを飲もうかと。 が、登山用ストーブに点火できない。 「齢とともに、春が待ち遠しくなってきたな」 「仕方ないな」と手元を視れば、火が。 春はもう気にせず、湯の沸くのを待ち始めていた。

今日の出来事/月下の貧乏人・14

事件・事故がない日はないのかな。 すべて報道機関の作りごとだったらいいのに。 アナウンサーがいつか言わないかな。 「平和な1日でした。報道することは何もないのでスイッチを消し、今宵も月をご覧ください」

素通りする/呼吸・34

自分を遺棄することもあるだろう。 ただ、手は武器を作り出してきたが、楽器も作ってきたのだ。 眼前に野卑な輩がいても、ときに素通りすればいい。 呼吸が落ち着くまでは。 知っていたはずのことじゃあないか。

終末から2013/都市サバイバル・ノート231

単独で生き延びようとする欲求への違和。 せめて不在の人々とも生きてゆこうとする姿勢の開示を。 死した者・産まれてくる者の存在に耳を預けるのだ。 いつかすべてと、ゆりかごで眠るが如く別れていくためにも。

まど・みちお的/野の花チャイルド・17

ベランダで小鳥たちが鳴き始める。 古の節回しで。 生きるの、死ぬのと喚いていても1回ずつ。 日々の月並みな相互扶助があれば、咲きたての花が微笑みかけていることにも気づける。 残酷・無残な今であっても。

ひたひたと/この領土で・67

実は守られなかった原則を変えようとしているのは何故だろう。 変えてしまえば守らせる契機になるから? 結果、人が人を殺めることが合法化されていくのか。 足もとの地上が、なくならなければいいのではあるが。

平日に滲む休日/歩く・10

歩きたい場所がある。 暖かい陽射しの下、清涼な空気に満ちた緑道だ。 ただ、気楽な野郎だ、特にこだわりはない。 妙な物質が漂う環境からは逃げ出したいが。 握り飯を頬張れば、「もうひと歩き」となるだろう。

初めての感情/言葉・55

鋭利で明白な言葉を発することのみっともなさ。 相対化できてしまうのに。 根源不在の力にならないプラス思考。 事実を受け止めたほうがいいのに。 希望と絶望の果て、今ここから始まる感情を見つめていくのだ。

聴いている/地声で・27

温かさを求め過ぎて、清涼さを見失っていた。 言いたいことだらけだが、考えなしの奇妙な身心を前に。 逃げ出したい人にさえ、認められなければ事態は進展しない。 空を見つめ発せられた声に惹きつけられていく。

どこにある? 取り戻す日本/この領土で・66

準備は、するだけはする。 そうして、取り越し苦労は意志して消していく。 もたないものな、この排除まみれの領土では。 日本を取り戻すより、日本に開かれていく――。 強い領土より腰砕けの笑顔を愛でながら。

働き続ける日々に/当世労働者覚書・13

人に手を上げることが痛みとなる身心。 人が悲しめば感染、喜べば同調する在り方。 弱さが尊ばれて、寒風も心地よく、微笑をもたらすことに価値が置かれるコミュニティー。 まずは一番身近なこの身心からの出立。

いただきます/言葉・54

狭い場所で片寄せ合い生息してきた。 「いただきます」と発して食べ始めることを繰り返しながら。 特に祈りはしない。 「ごちそうさま」と言い、食事を終えるようにもなっている。 ときに坂道を話題としつつも。

見舞った後の、再会のとき/彼・4

絶望の極北で、彼は微笑むことができた。 が、ついに倒れたという。 見舞えば、「誰にも逢いたくないな」と。 「でも、お前は別さ」と感じさせる身振り。 皆が、そう体感していたと、皆が知った中、葬儀は続く。

反動/この領土で・65

熱く燃える短い人生が望み? 奇妙なことを言うなあ。 高齢者で情熱的な方もいらっしゃるし、逆に若くして老いてしまった人も。 青雲の志を抱く青年が唾棄する単なる長生きでいい。 それだけで大変なことだもの。

即興/唄・19

仕事で歩き回っていた。 ふと、正統と言われる音楽も、生まれてきた瞬間は即興だと。 風が強く、冷たかった。 まず受け止める、後は着地していけばいいのだ――。 すべきことが残っていたが、家路が見えていた。

虹・1/マザーネイチャー・6

触れることができないからこその虹? 久しく観てはいないが、感じようとすれば姿を現す昔話のよう。 天と地を結ぶ淡さ、そうして空の拡がりがあるが故の物語。 胸のあたりを訪ね、たった今、触れてきたところだ。

幸福の、調べ/唄・18

指が滑ってゆく、流麗に、心地よく。 奏でられた音色は、会場を静かに包み込む。 人々は発することはないものの、感嘆のため息を。 成功して、家族関係も良好な幸せな演奏家。 彼が弾いたのは、悲恋の唄だった。

春な愛な脳/この領土で・64

山間部ではすでに、冬眠中の動物たちも出番を待っているところ。 人界ではいつ野蛮なことがなくなる、いや、できなくなるのか。 あれは幻想、これも幻想、それも幻想? 「知ったこっちゃない」と今日の坂を上る。

当たり前田のクラッシュ/暮らしの手錠・5

時代の先端が今日も蒸発していく。 そうして、暮らしの前線、いや、下層からの声が、いつだって背中どころか、胸元を突いてくる。 「想いを体現しなよ」 声の叱責、乱舞。 暮らしは賑やかに、静かに続いていく。

亡き父母に・1/この領土で・63

母からは楽しむ姿勢を刻み込まれた。 父は笑った、「絶対はあり得ない、絶対」。 戦時下にも暮らした夫婦の屈託と解放。 佳きことを思う今、ふと話しかける。 人様に言うことではないが、少しは楽しんでいるさと。

打ち明ける/この領土で・62

言い難いことを、そっと打ち明けられ、対応する人の徳。 言葉を伝えたいのではなく、感じたことを分かって欲しいが故の囁き。 それを受け止める生きた耳の姿勢。 人こそ人の道標という地図を広げ、確認していく。

春へ/平成四季派・7

まぶたを閉じず、見えてくることもある。 まなざしで抱きしめていた風景が、ゆっくりと確かに綻び始めるころだ。 眠いまま窓を開ければ、唄の種子も舞うのがうかがえる。 身心も寒いさむい空気を破っていくのか。

馬鹿宣言・6/都市サバイバル・ノート230

加齢が成長につながるとは限らない。 幼くなる領域もあるだろう、いや、ある。 かねてより幼稚に対して解放も体感。 ただし、開かれた、それ。 鈍色のくせに軽い雪空を見上げ、阿呆として口を開け続けていた朝。

月下の貧乏人・13/娘と・83

今夜、お前の唄を聴きたいな。 一緒に歌えるといい。 おれのつかまってしまった音楽も流そうか。 ともにハミングすれば、座ったままスキップするかのよう。 踊り出せば、月も首をのばして覗き込むよ、きっとさ。

昨日、疾走者/彼・3

かたわらを青年が猛スピードで走り抜けていった。 自転車に乗り、力強い身体にも乗って。 瞬時に小さくなっていく。 が、突然、止まった。 追いつき、見れば、彼の前には赤信号で止まっている男の子と老婆――。

命名する/この領土で・61

不吉なことを言えば預言者になれる時代。 恥ずかしいのは自意識からではない、存在自体がもはや恥辱なのだ。 改めて、森羅万象の1つひとつを命名していく? ついと生まれる笑みが、足もとを明らかにしていくよ。

席を立つ/彼女・5

「彼女はきっぱりと席を立った」 そう感じたのは、簡単だ。 立ち上がること自体が、毅然としているからなのだった。 たとえゆっくりと周囲を見渡しながらだったとしても。 わたしもまず踏み込む、席を立つのだ。

生産物/この領土で・60

テロは無差別、いや無区別。 やむにやまれぬものがあったとしても、恐いことは恐い。 ただ、権力はそれ以上。 親しげに近づいてきては、根こそぎ奪っていくのが常。 とどのつまり、生産するのは戦争なのだもの。