2010-08-01から1ヶ月間の記事一覧
受話器を置く母親。 少し困り始める。 子どもは、「困った困った」と、意味も分からず浮かれ出す。 母親は子どもの頭を撫でる。 父親は、出張準備のために帰宅するはずだ。 それまでは続く、困った母子の幸せ。
「あんたっ!」 「何でえ」 「御託ばっか並べてないで」 「何でえ何でえ」 「人の生は地球の病、人の死こそ地球の健康の証ぐらい言ってごらんなさいよ」 「そ、それ、ホントか?」 「あら、どうかしらん…」
帰路の電車内で居眠りをする人々。 立ったまま軽くいびきをかき始める方も。 利用駅に着けば、不思議と目覚め飛び出していく。 頭の中、背中に声をかける。「達者でナ」 そうしてまた目覚め、起き上がる朝が。
自然界同様、臓器にも夏休みはない。 だから、休日には、 風通しで生き返る廃屋の如く、 身心に風を通してゆく。
相手は近代ヤクザか…。 とりあえず逃げるしかないか。 津波、あるいは雪崩だもの。 「だが」 そう、肚で、明るく呟き続けながら。
収れんせず、弾けて、とろける音楽を鳴り響かせることが仕事。 そうした挿話が、1つ、あっていい。 いや、単に高ぶった覚醒があるだけでもいいな。 暑い、暑過ぎる日々に、わたしは多く、歩くようにしている。
棒に振った時間という薪に火をつけ、 少しずつ、そう少しずつ燃やし出す。 冷や汗を大量にかきながら。 想起するは、 日焼けならぬ花焼けをし、 時代をくぐり抜けていく人々、 比喩の刃物とさえ縁なき人々。
登山家たちが観てきたのは、単なる山々ではない。 孤独の極北、静謐な世界そのものだった。 死と隣り合わせの、凶暴で残酷な──。 空にかけられた、夏雲による首飾りもまた、愛でたはずだ。
何もかもだめになったとき、ここにいた、この身体に。 事がうまく運んだときもやはり、ここに。 もう出て行こうとはしない、出ては行けない、身体からは。 たとえ倒れこんだとしても、悦びの頂きにいたとしても。
和太鼓のリズムが腹を打つ。 脳はすっ飛び、背骨は弾け、身体は拍子となる。 東京・三鷹、夏の夜空へ破裂してゆく阿波おどり大会。 老若男女の、私事をうっちゃった笑顔よ。 路上の舞いがふと、解放と呟かせる。
前、どうぞどうぞ。後、いつものこと。 左、まだご存命で。右、本気かな。 上、やっだねえ。中、あり得ないって。下、困った困った。 実は前後左右上中下、丸抱えで、 夏草の上、大の字を描く天地の間の呑気者。
お前が今日、どこで遊んだか、当てられるよ。 やわらかい髪の毛から、ほら、夏雲の匂い。 夏はまだ、続くね。 仮に明日、終わってしまっても平気さ。 身体の夏は、いつでもどこでも、息づいているものなんだよ。
居場所があるだけで十分。 少しでも明け渡す場所があればなおいい。 居場所がない? あるさ、心と脳、体の乗り物、身体1つ。 そここそ、かけがえのない居場所、実は旅する場所、 いつか虚空へと明け渡す場所。
残暑厳しき折、戻ってきたあの顔、その顔。 苛立ちや不機嫌、何より疲労の紫煙で、視界不良に。 が、笑顔の夏が微かに、かつ確実に咲き続け、乱反射している。 目を細め、その気立てのよさに、感応してゆくよ。
友人に手紙を書き始めた。 亡き父母の件であらためて礼を書こうと。 が、手が止まってしまう。 長い年月が過ぎ、軽くなっているはずなのに。 ペンを置き、開け放った窓の遠くに拡がる夏雲を、しばし眺めていた。
無事帰宅の報告を忘れていた。 サンダルをつっかけ外へ。 麦藁帽子は被る必要がない。 目指すは公園。 夏に木陰を編み、冬に風よけとなってくれる親戚の下へ。 いつもの如く、巨木が沈黙の涼風で応じてくれる。
平穏無事な暮らしといえども、 小さなてんやわんやの連続であり、 1つとして同じケースはない。
夢と現実にギャップはつきもの。 その距離をはかり、 ときに首をすくめ、 明日に委ねるべきは委ねる。 ただし、暮らしの底力・夢の、輪郭は描き続けてゆく。
はなっから作品へ向かわないこと。 下手でいい。 不正確な叙述で構わないし、不誠実でも。 ただただ、切実であること。 切実さが、誠実で正確、かつ巧みな作品へと向かわさせるはすだ。
もやもやしていることを、解き明かした言葉に出合えると感謝する。 断言から遠くとも言い切れるのだと、敬服せざるを得ない。 書きしるした姿勢そのものに、身体が自然と拍手を送っている。 読み続ける者として。
脆いのに鈍く、鈍いのに細い、 軽く、単にはしゃいでいるだけの、滅びの空虚。 感染には要注意だ。 予防法の基本はやはり、ゆったり食べては、すっきり出し、ぐっすり眠る「ゆすぐ」。 地上で、地に潜むが如く。
「あっ」と気づき、安心立命。 「いっ」と疑いつつも、意気投合。 「うっ」と来て、右往左往。 「えっ」と驚く、栄枯盛衰。 「おっ」と悦ぶ、温厚篤実。 あいうえお、あえいおう、あららのあらまあ、明日また。
小心者だ。 爆弾のスイッチを押せないほどには。 肚は座っている。 逃げるべきとき逃げられるなら逃げ出すだろう。 ダボラか――。 ただ、靴を脱いだだけで解放感に浸れることは知っている。
浮いている、海の上の人々。 夏空のほう、ときに流れる雲を突っ切る鳥たちもまた。 浮いている、溶けてゆく。 どちらが上にいて、下にいるかは、もはや不明だ。 浮き続けてゆく、地球の皮膚の上。
旬のロックとされる音盤に手を伸ばす。 グループ名も頭に入らず。 はなっから落ちてゆく疾走感。 やられた。 ロックの精神の1つ、開かれた透明な哀しさに。 そう、身心すっぴん、非力で生き延びるのだ。
「なっちゃねえな」 親が子を、子が親を、子が子を、親が親を殺しているという。 「ったく」 せめて情死の救いがあればいいものを。 老老介護の共倒れには手助けが介在する分、光明の如し? 今、眼前の敗戦国。
いつからか、聴いて欲しい唄がある、 いや、違うな、 共に聴きたい唄がある。 書き直され、書き続けられていく唄──。 顔も知らない、すでに出会ってしまった千年先の友と、 愛の唄を聴こうか。 今日も。
すってんてん、てけつく、てけつく、すってんてん。 すったもんだの、すってんてん。 すってんころりん、すってんてん。 すくっとすっぱり、すってんてん。 すっぴんぴんの、すっかりすっぽり、すってんて〜ん!
暮らしている、畳の上で胡坐をかき。 暮らしている、日毎夜毎、食卓を囲み。 暮らしている、風鈴の音を聴きつつ、ゴロリと横になり。 暮らしていく、あいつらと。 暮らしている、暮らしていきながら。
定義している間にも、対象は変化するもの。 そも、暮らしに方程式はない。 あばよ、一般化に潜む虐殺と同根の誤謬、極端な物言いに隠した不感症、愚な規定ではなく規定の愚。 汗の夏を、ただただ暮らしていく。