深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

逢いに行く/この領土で・59

逢いたい。 陽射しさえまどろむ暖かい縁側で、熱いお茶を啜るまるい人々と。 逢いたいな、寒風が痛い夜、脱皮する個体と会話をしつつ、自分の歩幅で歩く人たちと。 やはり、この一言だ、「いつも逢いたいなあ」。

入っていく/歩く・9

山へ入っていく。 1つひとつ、余分なものが削ぎ落とされていく感覚も芽生えて。 踏み出していけば、春、硬い土が軟らかくなる瞬間に鍬を走らせたかのようだ。 脳髄にまで響く手応えを磁石として歩み出していく。

夜の斜面で/呼吸・33

夜の逃げ場所もなくなった、夜自体が隠れ家でなくなったときから。 が、構うものか、いつもさらされ、むき出しさ。 戦略・戦術は大切だが、すでに用なしだ。 息苦しいのは当然だ、せめてゆっくり吐き出してゆく。

望み続ける/当世労働者覚書・12

職場で働き続けられる条件は、いくつかある。 よい給料、恵まれた人間関係、行うに値する仕事等。 1つでもひっかかれば何とかなる。 そうしたことを望めるほどの歴史的変化。 報われるかどうかが胸に迫る中で。

極楽へ/この領土で・58

事件・事故の報せを知るにつけ、この世は地獄の事態かと。 昼に寛げ、夜に隠れる場所はない? ただ、極楽はある。 戦前・戦中・戦後の三位一体化状況であっても。 寒い日には湯、暑い日には木の下へ出向くのだ。

咲く/野の花チャイルド・16

艶やかではないし、目立つわけでもない。 ただ、静かで決まって明るく、人知れず愉しげな様子。 眺めれば眺めるほど、惹かれていく。 足手まといではなく、おっとりと、されど凛と咲き始めたお前。 冬の花1輪。

出直す/言葉・53

できるなら、よしとする暮らしについて語りたい。 淡々と自然に滲み出てくる言葉、冷静で初々しい発語。 もう望めなくなってしまった? 冬空に飛び立つ鳥たちの、涼しい目元に関して目端を利かせていくのだ――。

それだけではない/この領土で・57

都合よく、すべて収束するわけではない。 明確な結論があるわけでもないだろう。 仮にあったにしろ、ご存知の如く、暮らしは続く、エンドマークの後にも。 収束や結論は大事だが、それだけではないということだ。

踏み出す/歩く・8

朝暗きころより目覚め、手早く働き出す。 命を削るが如き営為は、実は暮らすため、暮らし続けるため。 生きることが無聊をかこつだけなのだとしても。 踏み出す、この先にも道はあると思い定め、踏み出してゆく。

歩く・7/この領土で・56

相変わらず消費に恋愛、競争だらけ。 すでに昔からと言っても過言ではない? 歩くのが望みだ、走るのではなく。 歩き続けられる歩行法を末長く希求、瞬時に行う――。

『日本家族』/この領土で・55

親の想いは古今東西、近似。 周囲とうまくやっているか、親しい人はできたか、何よりしっかり食べているか――。 友人知己に対しても、同様なのだろう。 成功しなくとも、暮らしていれば、まず安心なものなのだ。

聴いている/ラブソング・53

おれはここにいる。 今。 名前で呼ばれることが多いが、命名の由来は聴き忘れた。 長く、唄が発生する場所の音を聴き分けようとしてきたようだ。 そうして、いつか、あなたのいるところへ行くことは知っている。

休心/今日を暮らす・6

つくづく思う。 つましい食事に満足でき、歩くことを楽しめ、ゆっくり休めるだけで十分だと。 闘いがなければ、なおよしか。 この満足が、睡眠を削る労働や、餓死の上に成り立っていないことを、切望する冬の朝。

植民地は消してゆく/この領土で・54

押し寄せる不幸でしかない事態。 それでも、光明となる仕事を成した市井の方々――。 艱難辛苦に立ち向かった太い姿勢と、今も出逢うことができる。 己が身心に刻み込まれるよう、刻苦勉励、ときに笑みを浮かべ。

消失点/今日を暮らす・5

「みな、消えた」 続けて、「煽るだけ煽り、いなくなった」と彼。 「そうかな」と問えば、「消えた。だって、おれ自身、おれから消えていたもの」。 窓を開ければ、冷気が一気に、「目が覚めたな」と押し寄せる。

背筋を伸ばして/歩く・7

1人で笑っていられる、朝陽を浴びられたら。 大勢の中でも泣いていられる、夕陽を眺められたら。 大切なのに、放っておけること。 どうということはないが、どうでもよくないこと。 昼月を感じて、歩いていた。

雪が降った/この領土で・53

あっちでうんざり、こっちでがっくり、そっちでさっぱり。 充実と無縁でも構いはしないのだが。 野良犬はともあれ、野良猫もいないとは、「おやまあ」だ。 湯に浸かって、温かい飲み物があれば、まずまずな冬に。

脳という身体が思い、手という出先機関が記す/身体から・73

禅詩人・高橋新吉氏は晩年、身体にこだわったとか。 身体からはついに逃れられないものな。 学ぶことは多いが、追いつかない。 それでも、虚空に散らばるまで、この肉の小舟に乗り続けることを学び、訊ねていく。

火をおこす/娘と・82

歩き疲れる前には落ち着ける場所を探そう。 まず腰を下ろし、ひと休み。 それからだ、小さな火をおこし、温まるのは。 塩はある、明朝も平気さ。 楽しもうか、暗く美しい、いろいろなものが見えてくる夜の闇を。

睨む/この領土で・52

寒風の中、外へ飛び出す。 対等な出方で支配・所有を狙うビジネスマンの如き人々に気づく。 途端、シャドーボクシングを始める己が。 実は体内でのこと。 善意の、面倒くさくて、恐ろしい領域を睨みつけていた。

声は響いてくる/娘と・82

お前とは、慌てたことと同義の、電話での会話はしたくない。 微かな声を響かせ合っていたいんだ。 祈りのような、耳に吹く風のような糸電話を思い出す。 確かに届いてくるよ、いつも聴いているよ、お前からの声。

音はいつもしている/死を想う・6

周囲に散らばる胸苦しい音。 死は死、いくら検証を重ねても。 いつ、何のために、どのように、何故亡くなったのかは、突き止められないにしても。 だからだ、死は、人を瞬時にさらっていくのでなければならない。

誕生祝い/唄・17

人見知りで寂しがり屋、人好きな自分に照れてもいるね。 わたしであっても、おれであっても、ぼくであっても伝えておこう。 人から想われ、人を想ったとき、唄はもう生まれていたのだと。 実は胎内でのことだよ。

取り戻すもの/当世労働者覚書・11

初出勤の改札口。 思い詰めた顔や、沈んだ顔、疲れた顔が足早に通り抜けていく。 すべて網羅された顔も。 動きのない脱色された顔もまた当然か。 小1時間も経てば表情を取り戻すしかないが、肩は落ちていない。

逃亡者・4/今日を暮らす・4

逃亡しても至極当然の事態だ。 逃げられる場所があるのなら、悪びれることはない。 「ただ」と思う、ただ、逃げようとしなかった場所も身心に刻み込んでおくことだ。 逃げられず、立ち尽くしただけのときもまた。

歩く・6/今日を暮らす・3

1歩いっぽを体感しつつ歩く困難。 ふと、「傷は傷なのか」と。 ポジティブに考えようが、ネガティブに思い煩おうが、変えるべきは変えていくしかない。 早朝、歩き続けていると、歩行は意志のステップへと――。

否認する/この領土で・51

暗闇が深いまま、明けない夜もある。 どうしようもないことなのだ。 概ね不公平で不合理、ときに不潔で不届きなときも。 が、事実を受け止めるのだ、「仕方ないさ」と深く呟いた後に。 ついに諦めないためにも。

歩く・5/今日を暮らす・2

今朝も歩行が仕事。 目的地は必要ない、歩くこと自体が目的だもの。 ご近所も新鮮な本拠地の容貌に。 逃げ場所はないが、逃げ足を鍛え始めれば再確認できた。 身心の親和力と出逢っていくことが、望みだったと。

有史以前の世界/この領土で・50

朝のグルリを一新させる陽射し、昼ののんびりと泳ぐ雲、夜の心の隅を照らす月光。 祈りを受け止める星、息を呑む虹。 霜柱を踏みしめて歩く夜明けに、気づく。 腹の足しにならぬものが、いつも心に染みるのだと。

初売り・売れ残り/この領土で・49

地震はよく起きるし、原発もたくさん。 崩壊した学級にリストラ続きの企業、公害も。 暴力団は元気だし、軍隊だって必要とか。 おまけに天井知らずの借金まみれ。 ダンナ、お安くしときますぜ、この瑞穂の国家。