深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2016-01-01から1年間の記事一覧

還りたい場所/些事の日々・215

腹を空かしたとき。 コロッケを喰って悦んでいたじゃないか。 想い出す、ガキのころのことを。 堂々としていて寂しくもある赤い空。 3丁目の夕陽は求めていないが、夕焼けの中、腹を満たした情景には還りたい。

葬儀にて/死を想う・20

どんなに早く辿り着いても、結局、式は始まる、始まってしまう。 つまり、終わるということだ。 葬儀の席、悲しさが増していった。 別れはすでにしたが、葬儀であらためてやって来る別れ。 悲しさが募るわけだ。

今も働いているよ/老道・45

最近たまに訊かれることがある。 「まだ現役なんですか?」と。 老いた外見なのだろう。 働く者、食うべからず? 違うちがう、哀れと思われようが、何と言われようが、働かなければ、あはは、食えない、これだ。

寒/些事の日々・214

若いとき、お金がなかった。 が、老い始めの現在とは違う。 今や骨身に染み過ぎて、寒さは増すばかりか。 下手をすれば、生存の危機? いや、なに、路上生活をしているわけではないものの、笑うしかない事態だ。

手/彼・55

美男ではないし、スタイルがいいわけでもない。 頭脳明晰でもなければ、財力があるのでもないのだ。 にもかかわらず、人気の彼。 「手の動きにしびれる」との声が。 何より手そのものが素晴らしいというのだった。

耳は重要/唄・66

自分の書いた言葉を忘れてしまった。 どうしたものか。 その一方で忘れていたはずなのに想い出す流行り唄も。 身体に定着しているかどうかなのだ。 やはり聴くこと、しっかりと聴くことこそ唄の基本なのである。

騙されたい/情報前線時代・19

ときに情報断食を。 そうでないと身がもたない? 威勢がよかったり、裏事情に長けていたり、慰撫してくれたりする情報に騙されがちだ。 均衡をとろうとした瞬間、やられる。 何より騙されたいとき騙されるのだ。

オーウェルさえ超えて/情報前線時代・18

相互監視ならぬ、相互詐欺社会の蔓延。 一昨日の夕食は忘れても火星人来襲は信じてしまう? 脳髄の腹筋を鍛える。 そのために、ぴょんぴょんと移動できればいいのだが。 情報を鵜呑みにすれば命取りのご時勢だ。

洗顔/老道・44

冬の晴れた日の公園。 男の高齢者が満面の笑みを浮かべ、ベンチに座っていた。 顔を空に向けて、陽射しで顔を洗う仕草を。 至福の表情を浮かべていた。 傍らには、臭う寝袋と毛布、そうして1人用のテントが。

ビジネス社会のほうがマシ?/この領土で・374

陥没してしまうことが続く。 殺人が続いているのだ。 ビジネスなら、交渉が決裂しても、再交渉に挑むことができる可能性も。 が、人がいなくなれば、どうしようもない。 1%の連中は世界大戦を望んではいない?

ミスはつきもの/当世労働者覚書・72

納得いかなくとも、まず謝る。 相手の怒りを鎮めるのが先決だ。 想いは、「いずれ決着をつける」。 いつか分かるだろう、怒りが不必要だったと。 帰着しなければならないことはあるのだ、たとえ無理だとしても。

空さえ自由ではない/この領土で・373

軍門に降った自覚はなく、今でも勝とうとしている? 現状は、どうか。 軒先を貸して母屋を取られた? いや、母屋を取られてしまい、軒先で暮らしているのだ。 せめてと空を眺めれば、そこもまた収奪されて――。

近しき人を見送った2016(平成28)年秋/合掌・57

岡林信康の『友よ』を唐突に聴いた。 その1か月後、『ジュピター』も。 どちらも葬儀の席で流れたのだ。 活気・精気、何より元気をもたらした唄に涙する日が来たのである。 いずれ逝った奴らと聴く、聴きたい。

橋を渡る/死を想う・19

生ではなく、死こそ常態――。 ほんの少しだけ先へ行き、待っている連中を想起。 特に約束したわけではない。 ふと、川にかかる橋を、いとも簡単に渡っていいのかと。 できるなら、ゆっくり渡っていこうと――。

「愉しいのはいいよなあ、やっぱ」/身体から・118

いくつになっても、愉しいことはある。 身心が思うように使えるのなら。 例えば、水に飛び込むこと。 あれはいい、実にいい、とてもいい。 何が、どうして悦びとなるのかは、今もよくは分からないのではあるが。

町へ/些事の日々・213

財布の中の小銭を数える。 あっという間だったが、「よし」と呟く。 たまには、町へ出かけてみよう。 町の中へ入ってゆくときの快を知っている。 そうして、ついに町の人となってしまったときの身心の愉しさも。

悦びと恐怖と/子どもたちと・9

大切なことを伝えていきたい。 教えることはできないだろうが。 泣く、叫ぶ、怒る――。 疎ましいかも知れないが、伝わっていくことはあるだろう。 青空には悦びがあるものの、実は恐怖も内蔵されているのだと。

情報の洪水の中で/言葉・102

無理をしてまで協調することはない。 ただただ必要とされる人を想うばかり。 立場をわきまえることは、何と困難か。 せめて耳を預け、話は最後まで聴く――。 そうして、ていねいな発語をしていくしかないのだ。

核の民主化の時代?/この領土で・372

他国からの脅威が問題という。 が、日本こそ脅威と想われているとは考えないのか。 被爆国なのに核を認め、原発を爆発させたのが隣国だとしたら、どうか。 右も左も関係なく、大声が上がる。 怖さは募るばかり。

人が亡くなる/合掌・56

事故後の対応が素晴らしいとの報道。 が、事故が起きないこと、それも人災としての事故が発生しない文脈の定着こそをと。 路上には穴、原発は壊れていく。 今日もまた、人が亡くなる。 明日もまた、明後日もだ。

公園に集まる人々/老道・43

冬の公園――。 この言葉だけで思い浮かぶ、いくつかのシーンがある。 例えば、陽射しを求めて徐々に集まってくる高齢者たちの姿。 独り、またひとりとベンチを目指して来るのだった。 今日その姿を視に行こう。

「まいったね」/彼・54

上に立つ人の能力が足りない、いや、ないという。 人心掌握や何より労働そのものが不出来とも。 年下のおぼっちゃんらしい。 「仕方ねえな」と呟く彼。 「この国の話をしているんじゃあないさ」と苦笑いしつつ。

たとえ視えなくとも/月下の貧乏人・49

スーパームーンが出た夜のこと、「次は視られるか」と。 18年後という。 だからだろう、無駄に一生懸命に視ていたのは。 が、毎日がかけがえがないのである。 太陽は視られないが、今宵は今宵の月を愛でたい。

悪霊2016/この領土で・371

人間の皮を被った悪霊たち。 そう言いたくなる1%の蠢きが。 油断がならないのだが、どうしようもないときが多い。 一方、タチが悪いのは、人間の皮を被り損ねた輩か。 99%からの離脱のみで、事態を深刻に。

成功者/この領土で・370

資料を、自分の思惑で改ざんする。 重要なことはあくまでも隠し、おまけに安易に捏造も。 成功を勝ち得るために。 が、仮に成就したとして、それは一体何なのか? 功を成すと言い切れることなのか、どうか――。

疑心暗鬼の渦の中で/平成問わず語り・32

簡単に騙されて来た。 「ちょろいな」 そう想われたこともあっただろう、いや、ある。 が、儲け話で騙されたというのではない。 あるはずがないと想ってきたからだが、要は愛や正義の類でちょろい奴だったのだ。

喧嘩だってさ/些事の日々・212

喧嘩すれば違いが分かるという。 が、分かってから、何をどうするかだ。 言葉であっても殴り倒した相手に、受け入れる器量はあるのか? そも、佳きことが誕生するのか? 喧嘩程度で済むのかどうかも気がかりだ。

手を引く/歩く・37

盲人が盲人の手を引いていく――。 決して、この国の比喩ではない。 駅前で出逢った現実である。 夫婦が、互いの手を取り合って、杖をつき歩いていたのだった。 愉しそうに大声で山登りの予定を話していたのだ。

超高齢社会だってさ/老道・42

定年退職した人たちと呑む。 すこぶる元の気、元気そのものだった。 そりゃあそうだろう、まずのところ雨露をしのいでいるものな。 致命的な病気がある? あはは、その元気、まったくのところ、いかす病気だぜ。

あの名画この名画/情報前線時代・17

今もときおり、ふいに想い出されるシーンがある。 行為の細部、さらには細部の行為を丁寧に描いた映画。 心のうちこそ、垣間視えたものだ。 劇場の外には汚泥。 だからこそ、ときを跨いで想い出されてくるのだ。