2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧
響かせておこう、とろけるようなバラッドを。 そうして、シャンパンで乾杯をしよう、それからさ、夜の始まりは。 だろう? おれたちはこのまま、ここにい続けられるのか。 静かな怒りとともに、折れることなく。
あなたはわたしを見つけてくれた。 わたしがあなたの虜になったとき。 風が風を孕んで吹き付けてきたが、共に生きているだけで満足だった。 「望むものはないさ」と求め合い、2人、倒れ込んでゆくばかりだった。
暮らしに追われ、手助けできないからと、 罪悪感を持つことなかれ、後悔することなかれ。 倒れぬよう暮らし抜いていこう、 その場所の光を育んでいこう。 地球上はすでに、地続きになってしまっているのだもの。
安価で手軽なデジカメで、周囲を撮ってみた。 対象と向き合うことも大切だが、要は視線の実感か。 単に巧みで、きれいな画像は響かないと、気づいてはいたけれど。 今も観ていたい、美しくも優しいまなざし――。
風向きは、急に変わるもの。 立脚点は、絶えず変化する目の前にあり。 ホンモノ・ニセモノなる考え方に与するつもりはない。 ただ、そう言わざるを得ない現実は知っている。 いくつもの地下道を潜り抜けて行く。
焚き火が好きだ。 見飽きるということがない。 特に何かをするわけでもなく、ただ適当な長さに切った木々をくべていくだけだ。 「いい仕事をしているな」と感じつつ。 いつも夜は深まっていくものと教えられる。
浮き足立った状況は続く。 変わらず健やかな阿呆もいれば、気づけば不治の病を得た善人も。 不条理に、「なんてこった」だが、摂理なのか。 思い残さず亡くなった人々のほうが少数の地上の歴史に、今宵は月光を。
ついに善悪より、 生き延びていけるかどうかか──。 ただただ希望を持つしかない状況下、いつもの絶望できる幅も喪失中だ。 ゆっくりと靴ひもを結び直して、「行ってきます」の挨拶に、思いを幾度も込めてゆく。
駅構内の柱に寄り掛かる、人待ち顔の少年。 鞄の中を探り、取り出したものを瞬時に認め、封を切る。 そうして、笑みを浮かべてから、素早く口もとへ。 ごく軽いステップを踏み、アンパンを頬張り始めたのだった。
商店街で初めて待ち合わせをしたね。 おれを見つけて安心した途端、やっぱり走り出してきたよね。 小さな店には、お前の母親と食すはずのものが待っていた。 選び、予約できたこと自体、甘く大切なお菓子なんだ。
あなたは急いで、どこへ行こうとしているの? わたしは長く、行くところも逃げるところもない、そう思い定めてきたよ。 どこへ行っても今・ここでしかないんだ。 頼むよ、お願いだからさ、慌ててもう転ばないで。
ネイティブ・アメリカン曰く、 「母を売り買いするだろうか。 しかるに、今や母なる大地は売買の対象」。 事態は地続きで推移し、母は換金できないほどに汚染されてしまった…。 無神論者の合掌から始まる朝。
今日、地球上のすべての戦が終われば、 4・18以前と以後とでは何もかも変わるのだろうか、 望郷の思いも消えて、心はやわらかく脈打ってくれるのだろうか。 今日も、大切な無力感とともに、手仕事へ向かう。
長い時間をかけて、別れなければならない関係性もあれば、 毎日、出会い直す関係性もある。 今朝は、ブルーズの名曲が生まれる時代を感じている、残念ながら。 ぼくは誰と、何と、待ち合わせをしていたのだろう?
探りながら、ゆっくりと確かめる。 いつしか素早く小刻みに動き、ついに、しなる──。 汗は月を映して輝き、地上を照らすだろう。 皮膚から入り込み、口からも吸う音楽の法悦。 もっともっと音楽を、ダンスを。
花々が咲いているのに風。 人生論の誤謬も明らかになった春、 駅のホーム、枯れ木として立つ。 「つくづく寂しいものだな」 強風が吹く中でも花々は咲き出す、そう思い切る。
夜もやわらかく、あたたかくなってきたね。 気がふれるほどの美しい星空を、眺めていようか。 出合えるよ、街の方角からやってくる、新しい1日の始まりと。 そうさ、おれたちも朝になってしまおう、ふわっとさ。
テレビを観ていて、もらい泣きした母親。 かつて疎ましく感じたが、今や同じか。 年を重ねて無闇と愛を思い、要は無防備になったのだ、 おれは母親になったのだ。 いつか、母親を産めるまでになれるのだろうか。
つっかけで外へ飛び出す。 お前は追いついてきて、コートのポケットの中の手に指を絡ませてきた。 何だか口笛でも吹けば、お前は真似をする。 が、音にもなっていない。 切ない明るさが、月の如く胸に住み着く。
怯えや怒り、哀しみで疲弊するグルリ。 呪詛の言葉が発火する。 耐えている、危機意識さえ打ち砕かれて。 懺悔の値打ちもないとは、このことかと。 無名の、噛み締めた唇の傷痕と暮らしている。
まなざしで、一直線に愛でる。 妖しさや切なさ、不気味さを含めて、美しく咲き乱れる花々を。 地球の甘い吐息が耳元をかすめていく。 花々とわたしのまなざしが交差したときに。 そのときだ、歩き出したのは。
行間を読む必要もなく、毎日が底抜けの土壇場状況。 人質感覚は消えない、消えやしないさ。 耐えるばかりで、今夜も最後の晩餐? さてもさて、息が上がることがないよう、あなたと夜空を散歩しよう、あてもなく。
春、手はまだ、コートのポケットに入れている。 世界は意味ではない、無意味でもない。 今日も拝むことはせず、あなたを尊ぶことに賭けるだろう。 老いた桜の木のかたわら、「どうか、ご無事で」と強く念じながら。
万死に値する輩が蠢く中、 死ぬなら1回で十分。 名誉回復が未来永劫できぬ様相の中、 朝の大気を吸って、ゆっくりと吐き出すことさえ忘れがちだ。 調査結果は知らぬが、人々の死がこたえることは熟知している。
お前の好きな唄が何だったのか、よく思い出せない。 今まで気にしたこともなかった。 何故かは分かっている。 月並みだが、お前が唄そのものだったのだ、 硬質で、甘く、何よりリアルな声を持つ──。
春の陽気だ。 ただ、無頓着な2人。 陽だまりで有頂天だもの。 そう、悪くないさ、春そのものになれるだなんて。 春を必要としないほど。
記憶の底から1枚の写真を取り出す。 おれのシャツを羽織り、あたたかい陽射しに目を細めるお前はまだ、若い。 微笑む姿は、到達できぬ地平線を秘めていた。 2人が始まった場所、おれが今、掘り始めた輝く穴蔵。
「命が助かったことを、喜べない…」 そう呟いたあなた。 せめて微笑みかけることはできないものか。 互いに祝福し合える方途のかけらでもいい、どこかにないものか。 あなたは、わたしと同じ土の上に立っている。
周囲から邪険にされず、身心まずまず好調、 不思議と希望があり、そこそこ暮らせればいい──。 ただ、窓辺で眺める夕陽にも浮かぬ思い? あなたの清貧へのきれいな思慕が、 どうか自粛に回収されませんように。
患者が亡くなっても、「手術は成功した」。 その言葉に周囲は幾重にも苦しみ、悲しむ。 今や不安、いや恐怖を与える安全。 死者が出ても安全なのだろう。 桜に失礼な状況下、あの老木に逢いたい、逢いに行こう。