2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧
洗濯物が干された途端、烏がなき始めた。 呆然と、あくびをしながら歩く人々もいる住宅街で。 「すぐに行きたい場所はないし、真善美も罠が多いな」と呟く。 今さえ意識しないで、ひたすら足早に通り過ぎながら。
歩くには片足を出し、1歩ずつ進むしかない。 閃きにいたるまでの、長い時間の経過。 今の雨は、ステップさえ踏まさせない。 長く続けられるのは、閃きの持続があればこそ。 ときには跳ね、転び、歩いてゆくよ。
次々に押し寄せる怒り・恐怖。 日々、大量の人々の心持ちまでも殺す事態を、暗殺者でさえ褒めはしないさ。 放り出された場所は、狂気へと走らせる地平。 「ったく、冗談じゃねえよな」 熱いお茶を入れたところだ。
倫理は全体主義と結びつきやすいもの。 息が詰まる生真面目な姿勢からの言説にも要注意だ。 本物の偽物は多く、偽物の本物は少ない。 ただ、本物・偽物の基準自体が幻想だ。 古い皮膚を剥がして、さばけていく。
恵まれているのは、恵まれていない事態があるから。 生きていられるのは、今、亡くなる方を含めた生物がいるから。 犠牲、犠牲、犠牲。 のぼせず、その現在を問い続けていく。 夢の喪失を抒情とすることさえ拒んで。
都市消費者は不愉快な表情で立場を優位にしようと賢明だ。 自らを高級商品とするためにも。 合言葉は、「ノー・ノー・ノー」。 その無意識の荒廃には笑みを。 今・ここへのヴィジョン、「イエス」の声を降らす。
身の置き所がない? そう、尻が浮きっぱなし。 いたたまれなくなる? そうさ、胸が縮んでくるよ。 途方に暮れている? そうだね、首が回らないみたい。 ただ、風が止んだら散歩しようか、ここが目的地だもの。
謹啓 年が年なので落ち込むときもありますが、概ね酒の呑み過ぎによります。 それ以外、存外健やかで、「こんなに晴朗でいいのか」と疑うほど。 これはもう元気という病気かと、まずは諦めているところです。 敬具
「わたしの気持ちが通じて嬉しいの」だって? 決してそんなことを言っているんじゃあないんだ。 映画に出てくる悪党以上の極悪人がいるんだ、地続きの場所にさ。 世界に片想いのままでいいわけはないって話だよ。
引っ越しても同じような室内になるだろう。 移動中はかわり映えのしない風体。 そうして、歩き、泳ぎ、舞い、 多少は食べ、日毎呑み、眠りこける、似たような暮らしぶりか。 呑気に苦笑しつつも、望むところだ。
恋人から遁走できても、愛する思いはごまかせない。 1つの作品で、それも小さな作品で泣く人もいれば、笑う人もいる。 消せない思いを抱きしめ、強い酒を呑み干したんだ、さあ席を立とう。 単なる感想は捨てて。
朝に色濃く開いて、夕に色浅く閉じる花もある。 遠い昔、海を渡り、やって来たのだという。 時代は変わったが、今は亡き人々とともに、今夏の出合いも待ち望む。 咲く瞬間も長くながく、愛でられてきたのだった。
二日酔いのおれが吐く、臭い息。 それでも、お前は笑いながら、まとわりついてくる、全身でぶつかってくる。 「やめろってばさ」と布団に隠れても。 分かっているよ、率直に生きている明確な身心だということは。
惨事を前に、わたしたちは、いや、わたしは、根源的やさしさを提出できただろうか。 悲しさに同化、それでも歩まざるを得ない1歩を踏み出してきただろうか。 愛の何たるかを噛み締め、笑顔を生産できただろうか。
すべての健康法の有用性は奪われた。 まだ呼吸はできるが、欲まみれの薄いガス室にいるようなものだもの。 退職金が欲しい? えっ、どこで使うつもりなの!? 人質国家と断言しつつ、それでもなお呼吸法を始める。
神奈川の新茶の話が、ラジオから流れる。 家族の全身が一瞬、曇った。 「うちの、あっ、この野菜たち、大丈夫かな」 野菜本来の美味しさをと、市民農園で汗をかく日々。 無残な想いで土も睨むが、風は恨むまい。
世界では戦前・戦中・戦後の三位一体状況が続く。 今や戦中の度合いが高いと思う人々は増える一方だが、絶えず安心できぬとは…。 もう慟哭の前で胡坐をかく不正はいらぬ。 聴く耳を持たぬ正義もまた、勘弁だ。
人前での笑顔から漂う腐臭、咲き誇る自信には棘、そうして自己確認のためだけの善意──。 いらない、いらないさ。 雨の中、「奇跡や愛の一言で決着がつけば、どれほどいいだろう」と。 犬や猫とも朝を迎えたい。
風は木々が揺れれば観えるもの。 正直はあなたの戸惑いからもうかがえた。 木々は風に揺れ、遠くの風景を想起させる。 あなたの戸惑いは正直を受け入れ、裏切りを拒否した。 あなたは風の如く去って行くだろう。
生き延びていくには、知識、ましてや知恵ではなく、暮らしを求める思いが大切。 優れたものだけが周囲を作っているのではない。 やる気がなくても突っ込んでいくしかないときもある。 さて、今朝も出立の時間だ。
緑あふれる場所に日差しでうっとりできるベンチ。 待ち合わせをしていたんだ。 心待ちという良薬――。 腰掛け、通り過ぎる人々を眺めていたよ。 そうして、いつまでもどこまでも待っていたんだ、待っているんだ。
都市部では、「誰よりも幸福」に比べ、「私こそ不幸」と思う方の比率が高いという。 ただ、幸不幸には頓着せず暮らしてきた、 勝つつもりなく、単に挫けぬよう、その先を見つめてきた。 遠くからの声にも導かれ。
今では通過するだけの、消費するのみの街を歩く。 「言われるまでもなく、通路というわけか」 目や耳、鼻にはうるさ過ぎるから、貼り付くイメージを剥ぎ、進む。 「この街には、何もありゃあしなかったんだなあ」
昼間、眩しいほど明るくしなくていいし、 夜中、光の下で起きていたいのでもない。 休日、背中も寛げる広場で、寝転んでいられれば上等さ。 平日、歩いて食べて、歩いて出して、歩いて眠れるのなら、満足なんだ。
続いて何に箸をつけるか、身心で瞬時に判断、口へと運んでいく。 食卓を囲む人々との会話同様、食事もまた即興演奏の連続。 停滞しない演奏を続けていこう。 喜びの視線が交差する場所の成立を、今日も慈しんで。
お前という妙なる音楽は、ついと立ち上がって、音楽に身を任せる。 音楽と音楽が重なり、明るいため息や掛け声が奏でられた。 魂の存在に気づく場所。 アンコールの拍手が鳴り出して、お前とようやく視線が合う。
西日があなたの横顔を染めていく。 とうに善悪や損得は消え、美醜や容姿も関係がない。 惚れた弱み? いいや、惚れたことの、やむにやまれぬ直情、眠ることさえ出来ぬ幸。 立ち上がり、星を数えながら帰ろうか。
用意してきたものがあるんだ。 1本のロウソクだけれど、作れるんだね。 逢わなくなってどれほど経ったろう、笑みが暮らしになっていたかい? 聴きたいことがたくさん、たくさんあるんだ。 さっ、火を点したよ。
朝焼けの中で、美しいものを独り占めしたいとは感じないものだ。 だからといって、共有しようとも。 「ただ、在ればいいんじゃないか」、そう体感している。 発見することこそ喜び。 鳥は一瞬にして、飛び立つ。
子どもたちに説明ができぬ日々。 一件落着へと向かう言説がもう吐かれている。 個々の事情は知らぬが、マスコミ総体は死んだ、いや、とうに死んでいたのだ。 現状は当然の帰結、今も隠蔽なる犯罪が問われている。