深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「出て行け」ばかりの国で/彼女・12

口調はひどくやさしかったそうだ。 が、要は、「出て行け」と言われてしまったのだという。 そう呟き、彼女は、窓の外の様子をうかがう。 「わたし、からだが思うように動かないからね」 たったそれだけのことで。

川中ウオーキング/身体から・90

広くはない川の夏の楽しみは、笑顔との出逢いにもある。 流れの速さに転び、苦笑を。 見知らぬ人と目が合えば爆笑にさえ。 「ほら、そっちのほうがやっぱ、歩きやすいよ」 視線を放れば、首が縦に振られもする。

呟く人/彼女・11

無力感に貫かれていた。 哀しみを身心の奥底にしまい込むしかなく。 が、「それでは立ち上がれない」と。 「悔しいし情けない。でも、このままでは…」 涙を拭い、「どうでもよくないことばかり」と呟くのだった。

伏してお願い、みたいな/都市サバイバル・ノート251

暗雲が垂れ込めたときは、立ち止まることだ。 靄が出てきたり、霞がかかったりしたときも同様。 腰を低くして、周囲を眺める。 いっそ地上に伏して、成り行きを体感していく。 実は、長くそうもしているのだが。

次へ/還暦百番勝負・100

豪勢でなくていい、口に合う食事なら。 ゆっくりでいい、歩くことができるなら。 のんびり湯船に入ることができれば僥倖か。 薄くていい、布団の上で眠りにつけるのなら。 豊かだと思う、生きていること自体を。

疲弊の効用/この領土で・341

生命とはわがままな運動体。 だから、心を寄せ合うだけでいい? つながっていくしかないのだ。 人類総体が満ち足りて感情が動かされ、いつか互いに感謝し合うのだろうか。 それとも、疲弊の果てに、平和になる?

残すものは?/当世労働者覚書・24

我慢しかない労働の現場に談笑はない。 1世紀以上存続しているのが大企業ばかりでは。 小さくても希望が再生産される会社が今も、侮蔑を受けている。 いや、殺されているのだ。 手作業が死んだ後に、何が残る?

微笑むしかないとき/些事の日々・92

どん底の笑みは、大切なものを守るため。 微笑むしかないときがあるのだ。 「おしまいにしていいのか」と問う、問い続ける。 滑らかで一途な想いは、きっと残せるはずなのだ。 残さなければオシマイなのだから。

「あっ」/この領土で・340

信号がようやく青になる。 おれたちは品行方正、長い横断歩道を渡り出す。 いつもは先を行く奴が遅れていた。 振り向けば、指差している。 視れば、大きなおおきな夕焼けが落ちていき、山々を照らし出していた。

訪ねていく/言葉・76

場所を、人を、訪ねる。 到着すれば、「暑いですね」「そうですねえ」との会話も。 そうした日々に、ふと寄り道をすることもある。 道そのものを訪ねるのだった。 そうしたときだ、静かな言葉がやって来るのは。

目を開ける/身体から・89

風通しのいい場所に座す。 ゆっくりと静かな方向へ呼吸を整えて行く。 次第に穏やかな心持ちが湧きだして来る。 身近な生命も体感、その欲さえ感得するときも。 「ここからだ、ここからなんだぜ」と、目を開ける。

茫羊・亡羊として/些事の日々・91

逃げることはできない、約束、いや、時間の根源からは。 あるいは、徳や道からも。 承認への欲求こそ人を交わらせていくのだもの。 ただ、今も分からぬまま月謝を払い続けているかのよう。 寛げるかな、いずれ。

あの川へ/ラブソング・66

子ども時代の情景がふいに視覚に現れるときが。 そうして、聴こえてくる音色に、ひどく郷愁をそそられて。 あなたの感じていることぐらい分かっているさ。 わたしが思うぐらいだもの。 足を、川に浸しに行こう。

聴かせてよ、足音を/この領土で・339

コミュニティーの崩壊が続いていく。 隣組はごめんであるのだが。 個々に分断していったほうが、商売になるのだ。 挙句の果てには、行進するための組織へと? 今も友の足音を聴こうとしている、感じている――。

テッペンだなんて/平成問わず語り・6

気持ちをなだめてくれる感傷。 大切だ。 とはいえ、余裕の産物でもある。 むしろ、遠吠えのような哀しみ、また吐き気のような憤りの幅の中で呼吸を重ねてきたのだ。 棒倒しで、テッペンをとりたいわけではない。

商品の向こう側/この領土で・338

不必要な商品? いいや、究極的には商品という不必要に囲繞されながらも、思うは出逢い。 何と、誰との? 輪郭は不明なまま、想いが湧いてくるばかり。 問題は、出逢うことができる当方の、野生・野性でもある。

食肉を前に/身体から・88

美味し過ぎると倦むものだ。 だから日々、飽きない美味しいものを胃袋へ、さらに脳へも? 人間は確かに1本の管だと体感しつつ。 そうして、あらためて気づく。 管にあれこれ付着した、関係としての肉なのだと。

軽く、あくまでも軽く決意表明の如く/還暦百番勝負・99

遠い未来、ポイントカードはどう思われるのだろう。 何より私有地は。 わたしはわたしの主人ではなくて一向に構わない。 単なるお客として、いや、隣人としてつき合っている、いく。 営利や私有とは違う場所で。

青空・入道雲、そうして太陽の下へ/2014(平成26)年夏・1

石蹴りをしながら帰宅する後姿。 子どもは、哀しみを知らない? それこそ幻想だ、何も知ろうとしていない。 子どもは、ただ哀しむ術を知らないだけ。 実のところ、喜び方は、たんと知っているのにも関わらずだ。

「最深部へ」なんて思うこともあるさ/還暦百番勝負・98

喧嘩したことは確かに記憶している。 ただし、ときが経てば、原因はいつだって朧? 生命は尊い――。 そう発語する前に、肝心なことがあるのだろう。 身心を丸ごと迎え入れる自らの身心の回路を、まず歩むのだ。

ゴミだなんて/都市サバイバル・ノート250

物を捨てれば、スッキリ。 確かに。 が、精神に、贅肉がついていやしまいか。 そも、物に囲まれていてもなおかつ、スッキリした心持ちこそが、晴朗なのではと。 ゴミではない精神にはゴミさえ必要なときもある。

まずは温まる/還暦百番勝負・97

注射針が刺されるまでの束の間、死刑台への道のりと同根との言。 ほどなくしての死と、回復の違いはあるが。 病は移る、もらうこともできるが、生は? 元気はたえず生むものだ。 湯を沸かす道具を買い直そうか。

敗北主義ではなく/ラブソング・65

恋や愛を説明するのは困難だ。 両親の、その先の、戦争で亡くなった血族も叩き起こさねばならない? 無論、あなたの妖しく爽やかな姿自体も解かねばならない。 しかも、時代や背景等も。 ただただ、浸っていく。

困ったこまった/この領土で・337

周囲にも偏在する困った人。 出逢いこそ宝ではあるものの…。 が、人様を困らせる困った人こそ、実は困っている場合も。 満員の美術館で兵隊の如く絵画を鑑賞する愚は避けたい。 声を落とし耳をそばだてている。

絶縁体/この領土で・336

死は哀しい。 が、永遠の生命という惨さは恐ろしいばかり。 関東大震災に胸躍らせ、テント生活を愉しんだ子どもたちが長じて知った大切な声。 今、体感している。 上下しか視ていない空虚な想いとは縁を切ると。

道連れは勘弁/この領土で・335

頼みもしないのに奇天烈な意味を付与して、突き進んでいく一群。 一方的にご満悦な様子だ。 このままでいい場合もあるのだが。 滅んでいく姿を目撃していくだけ? それにしても、頼んでもいないのに、何てこった。

からっぽの世界2014/還暦百番勝負・96

「病気は治せるが、心は無理」との言。 一方、「病気は治せない、心は何とかできる」との話も。 さらには、「心身一如、共に治していくもの」とのヴィジョンさえ。 わたしは歩いていく。 空っぽになりながら――。

つい先日のにおい/些事の日々・90

モデルと了解できる美しい女性が座していた。 周囲の男たちの視線は釘付け、気配で分かる。 席を立つ彼女、周囲からため息が。 その途端だ、彼女がゲップを。 解放のような苦笑、絶望に似た微笑、臭い立つ平和。

♪朝が来たのねえ〜っ/当世労働者覚書・23

家族への罪滅ぼしとサービスとは違う。 そも、詫びたり奉仕したりする対象ではない。 今や衝動は閉じこもりがち、鬱屈は外出しがち。 どうでもいい言葉をしきりと思い出す。 毎朝、家族に別れを告げ、玄関へと。

今日このとき/還暦百番勝負・95

オートバイを乗り回した、暴走族ではなかったが。 メットを被った、企業や組織に属さなかったものの。 結婚し酒量は減ったが、板の間で寝込むことも。 行き倒れたくはないものの、保障なし。 夢は寝床での逗留。