深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

焼き鳥な空/還暦百番勝負・93

酒は進み、夜は更けて老けていく。 「そりゃあ勝ったほうがいいけれど、負け続けたほうがオツじゃね?」 焼き鳥を頬張り、ダチが言う、「何だ、それ」。 「まんまさ」 雨上がりの夜空に鳥たちが飛び立っていく。

死骸だらけ/この領土で・334

路上に何かの死骸。 わたしは言う、「狭い日本、譲ったり譲られたりが当然だべさ」 ダチ曰く、「ヒヤッとさせたら、ごめんなさいとか言っちゃって」。 連れ立って歩く傍らを、チャリが疾駆。 鳥の死骸が視界に。

追悼の定型に想い溢れて/言葉・75

人は死に続ける。 想いが希薄になっている? 整理整頓や掃除、あるいは片づけのような言葉ばかりだもの。 一方、悼みを追うとき、絞り出されてくる定型の言葉。 横溢する想いがあればこそと、あらためて気づく。

疲労物質として/還暦百番勝負・92

疲れているのかどうか分からないほど疲れている――。 そう、若いころ記したことが。 いつのことだったろう、覚えてはいないが、言葉がふいに。 今、十全な疲労とは遠くの場所で疲れている? 大雨が降っていた。

やり過ごすという技/彼・16

彼の身のこなしは、親切で温和だ。 ときに軽く逡巡、立ち止まる。 ただ、閃きが訪れると、嬉しい表情を率直に、衒いもなく浮かべもするのだった。 知っているのだ。 出逢うためには、やり過ごすことも大切だと。

酒好き/還暦百番勝負・91

酒が好きかどうか、考えてしまった。 昔から、単に酔いたいだけではないのかと。 舌触りや喉越しがいいだけではないのかとも。 「あるいは」と杯は空いていくばかりだった。 仲間と呑む愉快をも、味わいながら。

この国で/言葉・74

ダチがガキのようなことを。 「世間じゃ、フーコーやランボー、ジュネなんか関係ないんだよ、両村上は知っていても」 苦笑、かつ爆笑を。 来るべき美しい輪郭を描くことに心血を注ぐ営為。 朧で、実はリアルだ。

心に重心を素早く置いて/身体から・87

自分という身体の楽器に触れていく。 すると、「反対だ」と、静かに、確かに伝わってくる。 が、立ちはだかるのは、聴く耳を持たぬ自分という身体。 楽器自体を放り投げる場合も。 響かせて行けるといいのだが。

見つめ続けて/野の花チャイルド・25

正論を吐く輩が踏みつけている野の花。 いや、人様の足。 そも、正論が単なる暴挙でしかないときがある。 しかも、正論を内包できず、巻き込まれっぱなしの愚さえ――。 野の花を長く見つめ続けていた朝がある。

使い道/山へ・9

身心ともにクタクタになるまで働く。 回復を願う、待つ。 思いつくのは、子ども騙しならぬ大人騙しの娯楽? せっかく稼いだんだ、別のことに使う。 例えば切符ぐらい購入、山の中へお茶を飲みに行くのがいいな。

自分に乗る、乗り続ける/還暦百番勝負・90

おいそれとは傷つかなくなった。 ただ、知らず知らずのうちに壊れている、いく。 気づけば、あちこちにガタが来ていて、ハイ、それまでよ? はてさて。 今も、この肉という乗り物の操縦、いや、乗り方が難しい。

解体の後に/祝福・9

自己表現の後、何処へ行くのだろう? 知っているよ、表現の解体・解体の表現だと。 そうして、何処へ向かう? 知ったことではないが、1つ言いたい。 「表現が祝福のために、いつも生まれてくるといいのに」と。

肉筆を読む/還暦百番勝負・89

働いている現場に便りが届く。 ビジネスの話ではなかった。 「老木にも若木にも新緑が」とあったのである。 送り手のことを想像しつつ、熱いお茶を啜る。 そうして、肉筆から目を離して呟く、「そうだよな」と。

身も蓋もなくゲラゲラと/些事の日々・89

最先端のことが古臭くなる瞬間。 逆に新鮮になるときも。 だからどうこうなのではない。 その浮遊の中、暮らしていくだけだ。 勝敗には混濁したくないが、「ゲラゲラやっていたほうが勝ちだよな」と体感しつつ。

わたしも、「ラブ」と呟く、なんてね/還暦百番勝負・88

男は雄々しいもの。 何より闘うことが本懐? むしろ、「抱きしめて」と率直に歌う男たちがいたことを想起する。 弱さを吐露できる強さの如き領域。 実は歌いにくいことをリアルに伝え世界を抱きしめていたんだ。

もう1杯だけ/還暦百番勝負・87

静かに呑む最後の1杯。 朝が滲み始める頃合いだ。 パン屋で働くアイツは腰をかばい、働き始めているのだろう。 おれは後、少しだけ座っている。 才能や努力、勘といった不確かな言葉で判断すまいと感じながら。

ここのところ/些事の日々・88

進歩という破壊への疑義。 と同時に退化こそ進歩の証との言説も。 血税で原発の安全神話を宣伝する輩。 一方、マンガ1つで全否定される人も。 変わらないために変わり続けたり、変わるために座り続けたり――。

息切れしながら/些事の日々・87

何が武蔵野? 緑は多いものの、とどのつまりは家々が建ち並び、私有地ばかり。 小走りしていても、許してください。 お宅の中には、決して入りませんので。 ただただ、慌てふためいて、焦っているだけですから。

彼とわたし/些事の日々・86

憂うつだが、望みがすべて絶たれたわけではない。 が、晴れやかなわけもなし。 何だろう、この心持ち――。 気づく、中途半端なものの、気分はオカマだと。 お前の身心の方言と、わたしのそれとを重ねていこう。

雨に唄えば2014/些事の日々・85

忘れ物を取りに部屋へ戻る時間はなし。 ドンドン・ズンズンと突き進むしかない。 それはそうなのだが。 道を尋ねるつもりもなく、こめかみが震えている。 そのとき訪れた雨の唄、半歩でもいい、踊り出してやれ。

還暦たち/彼・15

酔うほどに口は滑らかに、賑やかに。 彼がふと呟く。 「東京にもいずれ自然災害が。怯むな、おれを捨てろ、それが生き延びる道だと、家族に伝えた」 静寂、または静寂。 そうして、わたしたちは首肯するばかり。

評価の要諦/些事の日々・84

1人の全容について語り切る困難。 何故? 時代や状況、関係や環境等とともに、人はあるからだ。 にもかかわらず、語りたい欲求は消えない? せめて、支えてきた周囲を繰り込みつつ語り出していこう、そう想う。

卓袱台を前に/彼・14

世間なる卓袱台を引っくり返そうとして痛い目をみた彼。 結果、家へ戻る。 「笑えるな、既にオヤジは死んでいて」 今は1人で母親の介護を。 ニッと笑い、「消えた女房が見たら驚くな、炊事洗濯の上達ぶりに」。

まだ視ていた/彼・13

近代絵画の複製を視ていた。 中年男が寂しげに緑道を歩いている、それだけの場面。 ただ、長く気になってきた。 そうして、「そうだったのか」と。 男の視ているものを視ない限り、視続けていくのだろうと――。

足早に/還暦百番勝負・86

寝静まったというのに相応しい時間帯。 街を通り抜ける。 古からストレスを解消してくれる言葉はどれも似ているものだ。 やましいことをしていないのであれば糾弾されても大丈夫とか。 わたしを通り抜けていく。

理解できないこと/彼・12

青空の下。 連れ立って歩く年下の彼が言う。 「分からないんです、家を建てられるわけが」 働き続けて来たが、「家族を楽にさせられなくて…」。 「感動や悲劇へと収斂させないことだよな」と、ひょいと応じた。

集金人ばかり/この領土で・333

用意周到に張り巡らされた集金システム。 収奪と言い換えられる緻密さだ。 今も肩書きにお金が支払われている。 背後を失わない限り、貧相な人々さえいい気に。 切断面を間違えるな、自らの肉も飛び散っていく。

笑えることだってあるさ/些事の日々・83

久しぶりに親戚からの電話。 不吉な予感に貫かれる。 「元気ですか?」と問えば、「まあ、何とか」の常套句。 言葉を待つことしばし。 すると、「落語会があってさ、行かないか」といった胸が膨らむ落ちが届く。

盲導犬と/彼女・10

盲導犬と暮らす人と街歩きを。 胸を縮める恐怖。 工事や自転車走行、はみ出した看板等。 が、1人と1頭は難なく歩く。 素晴らしい音楽が楽器を超えていくように、2つの生命は微笑み、清々しく歩き続けていく。

大往生という言葉の内実/還暦百番勝負・85

大往生とは? 食事ができなくなり、意識は消え、呼吸が難しくなって、心臓が止まること。 死斑もうかがえる。 表情や臭いでも分かる人の生き死に。 今、食事に排泄、入浴ができるだけで、「ありがてえなあ」と。