2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧
仕事場にいたが、見えていた。 実家へ届ける大きな土産を抱え、電車の片隅にいた妻子の姿が。 重さを励みにしていたことも。 そうして、やはり見えていた。 土産を手渡され、手をつなぎ帰路につく2人の微笑が。
神仏に関係なく、ただただ祈る連れ合い。 神話の世界にも住み、稀に周囲を諌めもする娘。 そうして、無神論者として暮らしてきたわたし。 話し合いはしても、議論や批評はしない。 暮らしには、必要がないもの。
刃物の比喩も流通して久しい。 反射的に、「刺してごらん」と思う、「生きて蠢く肉を刺しに来いよ」と。 今や実際に刺す輩がおり、困ったものだが。 鋭さの、実は身体の鈍さ。 おれはとうの昔、おさらばしたよ。
御と様の間の馳走。 「いいね」「とても」 共に顔を上げれば夜の青空。 「いいな」「とってもね」 1度に話しきれない、生命の放送局のように弾む言葉たち。 「いいね」「いいよ」「とってもね」「とってもさ」
間尺に合わないことだらけか。 超然とすればいい? できるわけはなし、するつもりもなし。 結果、唄が残った、歌える。 腹から口まで歩き抜く、あたたかい風としての唄。 そのとき、身体は風琴そのもの──。
組織の疲弊が突く。 組織と疲弊はイコールだと。 知覚・感情が知能・意志の源となる。 判断を投げ捨て、聴くだけの今でありませんようにと。 関係の病・病の関係に陥らぬよう、ただ在ればよいと感じ続けていく。
単なるゲップとしての他者批判。 同じ唾棄すべき領域を抱えるからできるのだろうな。 生存できるかどうかの時代にうざいばかり。 おれは、「正直が唯一の取り柄」と言い切りたくて、食卓で朝日を待ちわびている。
「寒いな」 自らの心、息を吐けば口元で雲が発生す。 今日もまた自壊に自裁、自滅の報道か。 おれは知っている、座り込んでしまって当然だと。 力尽きた際、生きられぬシステムこそ奇怪なのだと痛感する日々に。
筋肉は晩年まで鍛えられるが、内臓は幼少時から養生が大切。 ただ、養生もまた、心の使用同様、少な目が肝要か。 そうして、希望・絶望ともに、ついに妄想の如しであるのなら、 希望の匙加減で五臓六腑に笑みを。
孤立と孤独をはき違えた時代。 独りから始める、いつも、どこでも。 独りの中に住む他者を訪ね、尋ねながら。 そも、自分がいれば、すでに独りではない。 あ、面倒な話はいいか、とにもかくにも独りから始める。
久しぶりに訪ねた部屋、壁に埃の積もる子ども服。 他には何も、そう、何もない。 重い哀しさを嗅ぐ。 外では花が踏み潰されていたが、艶やかさは息づくばかり、なおも。 呟く、「生きているさ、生きていくさ」。
予告編の如き本編としての時代、ただし興醒めの。 刑事でなくとも推理せざるを得ないのか。 卑しくもなるさ、イニシャルで臭わされるから知りたくもなるのに似て。 が、当然のこと、今、現に生きているのだものな。
遠いとおい昔のこと、 人が、海から陸へとあがってきたのは何故? 森へ行ってごらん、よく分かるはずだから。 そうだ、海の森を思いつつ、木々の海で歩こうか。 わたしたちの祖先と、きっと出会えるはずだから。
齢を重ね、便利になった。 わずかの本と音盤があれば、楽しいのだもの。 どれも面白いとだけ記憶し、全容は忘却、結果、初めて読み聴きするかのよう。 いつか1冊・1枚も必要なくなるのかな。 便利で、楽しみ。
夜遅く、空いた電車で座す。 尻を暖める座席に、心根も落ち着いていく。 夏に川のせせらぎを聴いたときの安堵感の如し。 ふと、「台所の問題は台所だけで解決しない」のと同じく、 心の問題も心だけではな、と。
格言・警句が鋭いほど、粉飾決算と体感してしまう。 いっそ明言すればいいのに、「寂しい」と。 もう帰ろう、流行り風邪から逃れ。 羅針盤の疎外感も抱えて帰るんだ。 あなたの足音を聞き逃しませんように、と。
底冷えが圧力となって迫る日々。 1日の経過が切羽詰まった慌ただしさを招く場合もあれば、 たったの5分が心落ち着く余裕をもたらすときもある。 今日は今日の足を運ぶ、手を動かす。 今日だけの言葉と出合う。
無人島へ持っていく本? 今は、どうでもいいなあ…。 そも、本を読んでいるときはいつも、無人島にいるようなものだもの。 それにさ、他の人はいないかと、懸命に探し回るよ、まずの話が。 きっと見つかるまで。
お前が臆病者だったので、ひと安心しているよ。 子どものとき、暗い場所は特に怖いもの。 それをよく覚えておいて、育てていくんだ。 気づけば、夜さえ平気になっているさ。 そのとき、率直な臆病者だといいね。
ふざけて幼稚になり、バカバカしさを満喫しつつも、 何やらふっと、愛しい気持ちにつかまれる――。 そうした親しさには、生涯、つきまとわれていたいな。 薬味は、切なさ? さあて、今日もまた、食卓を囲もうか。
角を曲がれば、狭い道路にも寒風。 ビシッとの鋭い音に自転車を止める。 見ればボールが素早く往復、キャッチボールの最中だった。 先に汗を拭い、休んだのは父親である。 対話を楽しめたと、娘の破顔が明かす。
気安いラーメン屋の空いた時間帯、爺さんたちが集う。 「おばちゃん、悪い、いつものやつね」 1杯の大盛りワンタンメンと1皿の餃子に、3人で向かう。 衣服にも汁をこぼすが、安心からの満足が腹や心にも届く。
ほんとうはいやなこともあったはず。 でも、とてもなつかしいおもいで。 たのしいことばかりをおもいだすんだ。 おまえとおなじとしのころのことだよ。 だまされているようだけれど、うまくできているなって…。
「おう」「何だい、うるさいね」 「感動の長編小説の如き人生かと思いきや、短編だったって奴いるよな」「いいわね、濃くてさ」 「まあな」「アンタの場合、長編文体の笑えない小話だわね」 「てへっ」「ふふっ」
蓋を開ければ、相変わらず「こんなことだったのか」と。 勝手に明るい寂しさを抱えているが、重き憂いは遠い。 喉が渇くばかりさ。 今すぐに、謎解きの本は捨てられる。 土のとろける甘さを欲しているのだもの。
「誰の言葉を読んできたかも大事だが、 どう読んできたかのほうが大切」 そう、あらためて感得した仕事始めの日。 その場で決着を発見していく、 要は疑問符を提出していく。 言葉の響きもまた、体感しながら。
嘘のない仕事を1つでも多くするため懸命な日々に、 政治の死ならぬ死の政治か。 銅鑼の音さえなく、 またもや乗り込む、あるかなきかの泥船。 拒否を断固拒否しつつも――。 今朝も日本晴れ、ああっ、いかすぜ。
共生が到達できぬゴールの如きご時世。 わが家には、神を信じている者と祈る者、 そうして、「神はまだ産まれてもいない」と主張する無神論者がいる。 馬鹿丸出しで喧嘩もするが、浮かれて踊るときも多い。
忘れられぬこともあるが、 常套句に万感の思いを込める気分一新の年始。 身体の密林を訪ねれば、「まだまだ」という手招きの声が。 それでも、ついに風任せか。 なあに突風寒風も、「元気なら心地よき也」さ。
宗教を土台にしない、科学一辺倒も。 説教は余裕があるなら受けて立つ。 嘘はとうにご免だが、食卓は長く愛している。 結局、同時に2つのことはできないものの、 暮らしが同時によくなることは今も希求中だよ。