深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2012-09-01から1ヶ月間の記事一覧

抱きしめたい2012/この領土で・2

遠回りをして、木々の下を歩いていた。 真冬でも、涼しさが心地よい場所。 手に負えぬ事態が飛来していても、静かな心持ちになれる時間。 ふいに、抱きしめたいと。 抱きしめられている感覚が目覚めていたのだ。

歩く・3/都市サバイバル・ノート227

殴られるより、足をすくわれたほうが、こたえるときがある。 足下を失うより、困惑するときも。 知恵を受容できて、つながる。 今は歩けるだけで寿げる日々か。 いっそ、眠りながら歩ける舗道はないものか――。

恐/死を想う・5

疲弊がうとましいなら、まだいい。 疲れが美しく透き通ってきたら危険信号。 きれい過ぎて人肌が匂わぬ妄想の産物同様だからだ。 出逢えば了、出逢ってしまっただけでオシマイ。 死の冬から足をずらすしかない。

歩く・2/身体から・67

しっかりと歩く、機会さえあれば。 乾きやすいシャツに着替え、靴紐を結び直す。 歩幅をいつもより広げ、背筋を伸ばし、胸は反らさずに下は向かず、早足でゆったりと歩く。 いつしか、脳髄も身体となり、爽快に。

労働という薬物/馬鹿宣言・5

馬鹿みたいに働いてきた。 馬鹿が馬鹿の真似をして洒落にはならぬと承知している。 要は馬鹿が働き続けて、脳天破裂気分。 放射性物質を撒き散らし続けるスケールには、まったく敵わぬ馬鹿ぶりなのではあったが。

散歩という現実/この領土で・1

「ミーコ」と話しかける女性の声。 振り返れば、散歩途上の様子だ。 女性は伸びをし、腰を軽く叩く。 「70を超え、走れないのよ」、続けて、「ごめんね」と。 柴犬は、飼い主をいよいよ見つめている、じっと。

喰い改めよ/食卓慕情・1

秋、腹が減るだけで、寒くて寂しくなる。 よほどのもの以外、美味しく食べられるのだが、共に食すものがいれば、なおいい。 生命をいただく不気味さ、それを散らす共犯者。 天高く地低い中、どこでも食卓となる。

余韻/背骨の記憶・1

針箱をまじまじと覗き込んだのは、いつの日か。 ナフタリンの匂いも微かに漂ってきて。 戦々恐々の興味津々。 昨日と同じ、風鈴をしまい込んだ日だった? ズボンの穴は消え、片付けられ針箱の場所にも夏の名残。

今ここの領土問題、もしくは平成荒地派/唄・13

高齢者から、安心が蒸発した国。 道行く人々は、居場所を見失うばかり。 暮らしから暮らしへと向かう唄が発生しない地上に、何が生えるのか。 胆で唸ることさえ消えた敗戦続きの領土。 行き倒れからの出立――。

耳の力/身体から・66

口は強く意見できる。 目が熱く訴えかけてくることも。 一方、耳はただ受け止めるだけ。 人と人との間で気配が曇ったとき、押し黙り、両者の耳をじっと見つめる。 晴れ渡った精神の耳が生まれることを願いつつ。

まず詫びる/都市サバイバル・ノート226

過ちを犯したとき、媚び、へつらい、自らを台なしにすることはない。 まず、親という場所にだけは確実に詫びておく。 作って、守り、拡がってゆくのだ。 あざ笑われても、小雨がやさしく降ってくれるときもある。

パーティーが終わらない/ラブソング・49

降り始めたね、もう帰ろうか。 雨脚が強くなってきたもの、消えるに限るさ。 雨が走っていく、追いやっていく、叩いていく。 あっ、水溜りがいくつも――。 上がるのを待ち、路上に月を探すのなら、つき合うよ。

初秋2012/平成四季派・5

あの夏を忘れていた、この夏も忘れるのだろうか。 ただ、残っている、数は少ないが、手放せない言葉。 鳥たちは、同じ頃合いに、同じ木々へ帰って来る。 そうして、同時に飛び去って行く。 初秋に見つめている。

肩を叩く/都市サバイバル・ノート225

「どう生きているか説明できなければいけない」との言。 最近、考えたこともなかった。 どう暮らしていくかばかりに捕まってきたのだから。 「考えてみるか」と自らの肩を叩く。 まず温かいご飯に味噌汁からだ。

そこかしこに親だらけ/当世労働者覚書・6

地元で親しまれてきた店舗経営者が言う。 「実はね、お客様は神様ではなくて、親なんだよ」 育ててくれたのだ、「孝行は当然」と言う。 「後は見捨てられないよう、ぶれないこと。それで駄目なら、諦めがつくよ」

暮らしのように/唄・12

唄がやってきたとき、唄に包まれるとき。 唄を歌うとき、唄が伝播していくとき――。 唄を分解・解析しても、その力には届かない。 唄に捕まえられた身心は、捕まえている。 出逢う前と、出逢った後の変化を。

ごあいさつ2012/言葉・48

「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮」と、アドルノ。 3月11日以降、詩を書くことは恥知らずともなった。 が、それでも書かざるを得ない。 だから、と言おうか。 おはよう、こんにちは、こんばんは。

地下へ・2/都市サバイバル・ノート224

ただただ地下へ。 暗いものの、目は次第になれるだろう。 ひんやりとしていても、隣人がいれば地上より温かいときさえある。 実は軽くて広く、裏表さえなくて平ら、そも、単純。 そのように暮らせる地下もある。

地下へ・1/都市サバイバル・ノート223

まず、しっかりと靴紐を結び直す。 続いて、人と手を握るのだ。 すると、自らの首を絞める、飛び降りる、刃物を手にするなどできない。 それからだ、階段を1歩いっぽ、確かめながら、ていねいに降りていくのは。

全国難聴強化月間/残暑な・6

連れ立ち歩く楽しみは、語り合いにもある。 が、声を大にしなければならぬ場所ばかり。 互いが居場所となる放し合いさえ困難なのか。 炎天下の公園へ逃げ込めば、小さな声が言葉少なく届く。 響きに身を預ける。

植物に訊く/都市サバイバル・ノート222

マナーどころか、ルールも雲散霧消――。 根が腐ってしまったのだ。 肥料はもちろん、水の与え過ぎも厳禁、陽射しや酸素の不足もまた禁忌だ。 要は、適度という案分、よって立つ土の回復。 理の具現化しかない。

剥き出しな/都市サバイバル・ノート221

単一の国家を超えた世界的金融資本。 この国の雇用や医療、何より暮らしを瓦解させている。 すがるところはもう、ない? 不信に信で人心地、足下の枯れそうな雑草に眼をやる。 苛立つほどには、愛はないはずだ。

亡命者覚書・1/言葉・47

言葉というメディアにふさわしいメディア――。 もう登場したのだろうか? 言葉を、贈り物として送・受信し合う世界。 まだ亡命者だらけである。 だが、すでに、そこで暮らす住民として、言葉を浴びられないか。

姿勢・7/残暑な・5

時代が、状況が、歴史が、例えば教育が植えつけてくる強迫観念。 自己表現という名のドグマ。 何者でもないことへの着地が大切だ。 ただ暮らしていくことを怖がることはない。 いつか自分ともおさらばするのだ。

歩幅/残暑な・4

熱狂的イベントに出喰わすと思う。 「寂しいものだな」 眼前の現実で十分、声援は近ければいいというものでもない。 「歌え、暮らし」と言うのでは、すかし過ぎか。 歩幅を狭めるときもある、歩き続けるために。

月並みな、あまりに月並みな/平成四季派・4

あっけなく惹きつけられていく。 夏の水平線に夕陽、潮風、秋の屋根に猫、月。 冬の森に新雪、木漏れ日、春の富士山に柴犬、桜。 今朝も今朝とて地上を歩けば、通年、風通しをよくしてくれる朝陽に植物、朝露――。

秋の夜半に/娘と・80

お前が勉強をしている姿――。 思い出したことがあるよ。 隣の清ちゃんと遊ぶ時間が待ち遠しかったことや、あれこれさ。 何をしたいかは明確だったな、次から次に生まれてきたな。 なんだ、今のお前と同じだね。

路上の流儀/残暑な・3

自転車が横断歩道の向こう側で止まる。 彼は汗を拭う、水を少し含む、ひと息つく。 人々は歩き出していたが、視線は雲のほう。 ただ、その後、お年寄りが渡り切ったのを確認した途端、一気に走り抜けたのだった。

夏休み最後の日に/残暑な・2

いつのことか、宿題をし残している感覚に捕まってしまったのは。 宿題は、あれ、これ、それではない。 ただ、分かっている、手をつけなければならぬと。 誰にも提出しない宿題があると、あらためて思い出す初秋。

宿題、終わった?/残暑な・1

貨幣や物、サービスは必要だ。 ただ、一緒に、心のこもった時間を過ごすことが奪われていたのでは…。 愉快な雰囲気が横溢していれば、子らも熱心に勉強をするものだ。 結果、広大で、深い場所へ辿り着くだろう。