深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ご馳走/娘と・78

パーティーの席上、覚えることはたくさんあるよ。 慎み深さと出逢うこと、素朴な関係を発生させること。 何より、忘れられた唇から静かな言葉を聴き出すこと。 だから、お前のためにもご馳走が振る舞われるんだ。

本当の音色/言葉・41

本当や本質、本物や本来、本気という言葉を使うつもりが、今はない。 気恥ずかしいから、使用できないだけなのだが。 むしろ使わずに、その指し示す方向を言い表せたらいいのにと。 それが本懐か、いや、本音だ。

放そう/都市サバイバル・ノート205

被害が今日も数値化されていく。 ただ、こぼれ落ちるものが突いて来る。 底にいるとき声をかけられ、返事もできぬときのよう。 と、そのとき、体内で泣いていた幼子が語りかけてきた。 「ねえ、一緒に話そうよ」

腹が鳴ってはいたが/唄・8

ラジオから流れてきた唄に、手を止めた。 大木のてっぺんで揺れる1枚の葉の如く、心許ない。 ただ、含羞のない正義とは縁を切ろうとする声――。 名も知らぬ歌手の存在自体に感応、立ったまま深く腰掛けていた。

決定論の無理/都市サバイバル・ノート204

人間を遺伝子や脳、本能で定義し、決定へと持っていく人々。 わたしは老いた。 永遠に男は闘い、女は護る? わたしは老いている。 老いの過程で、なおも老いていくが、今日生まれる遺伝子や脳、本能を想像中だ。

窓は開け放たれて/些事の日々・73

休日早朝、集合住宅前の広場にいた。 いくつかの目覚まし時計の音が届く。 くだけていて親しみやすい囁きから遠い、金切り声? 「そういう季節になったのか」 窓へ向けて、「お疲れさま」と、朝から呟く。

変えようとすることはない/地声で・23

人前で緊張するし、人づき合いも苦手? いたたまれなくとも、源は変えられないんだ。 性分だもの。 そこでだ、彫って磨き、屈託の艶を炙り出すのだ。 遠くの暗がりを、一瞬でも照らすことができるかもしれない。

お詫びと泥酔/月下の貧乏人・9

無論、金はない。 もはや不治の病。 そのくせ、「いいねえ、一杯奢るぜ」と思うときが。 ただ最近、そう言いたくなったのは、仕事遂行中の盲導犬や象と出逢ったとき。 笑う子どもたちと、はしゃいだときなんだ。

桃源郷から逃れて/野の花チャイルド・13

桃源郷は存在しないから求められるものだが、幻想はもういいだろう。 ただ、少しでいい、ゆったりできるといいな。 義や礼節を欲してもいいだろう。 身心が触れ合い、和やかな気配が味わえれば申し分ないのだが。

あの世で、『三酔人経倫問答』もどきに厭いて/合掌・34

「お前の母親は嘘をついたね」 昔、婆さんが長髪のおれに言った。 「だから安心できたよ」 一方、叔母は真面目で心配とも。 笑い倒すお袋と澄ます叔母も地上に来ては、「皆、元気?」と同じことを聴くのだが。

店を求めて/平成四季派・3

脳の自転車操業中、雷、いや、神鳴りで夏は来るのかと。 祈りは人類発生時からだもの、古代人として健やかな夏を祈る。 わたしたちという被曝地。 焚き火ができる酒場があるといいなあ。 花壇食堂や芝生喫茶も。

適量から適質を取り出す/些事の日々・72

花は肥料を与え過ぎると、枯れてしまう。 大きなステージだけで演奏していると、小さなライブが怖くなるとも聴いた。 適量はなかなかに難しい。 ただ、足を護る靴は何千足もいらない。 いや、百足でも多過ぎる。

走る日々/月下の貧乏人・8

地が割れ、押し寄せる涙の洪水を拭えない状況だ。 貧乏人の助っ人だくさんをと願うが、分断状況は続く。 冷や飯に、味噌汁をぶっかけ、喰らい、走る日々。 非力で本質と縁はなくとも、存在自体は開示していくのだ。

加害者の被害者顔/地声で・22

「どうなっているんだ」 自分様の喧しさは軽いくせに腐臭がする。 「そりゃあ自分は大切さ」 そう、周囲を花色の遠くへ運ぶ文脈において。 ただ、地上を瓦礫化させた考えを踊らせるわけにはいかぬと、風を噛む。

わたしは聴きたがっている/唄・7

仕事の合間、ベンチに腰を下ろす。 脳髄を走ったのは、元気に絶望していく昔の若者の唄。 ついと流れる涙。 そうだ、久しぶりに唄を書こう、遠いとおい昔に届く唄、つまり明日への唄を。 まず己に聴かせるのだ。

働く声/唄・6

働いて働いて働き続ける地上を這う日々。 多数であれ独りであれ、認めてもらわないと気がすまない? いや、価値や意味などには無頓着で、心が少し喜べばいい。 まず食卓の成立を、そうして歌うのだ、今日の声で。

至上の愛/作る人々・1

修練を積む、試行錯誤を繰り返して。 いつしか自分にはできない領域を知る。 が、できることを試み続け、ついに自分にしか奏でられない音楽へと行き着く。 実は不器用なジョン・コルトレーン誕生の経緯だという。

匿名から遠い無名の男の独白/地声で・21

人々はふいに去った。 現場で確かめたことだが、それからのことは今も朧。 わたしは耐えているのだろうか、結論を性急には求めないように。 馬鹿な。 善悪以外の物差しも自ら作り出すしかない、歩き続けながら。

関係の病・病の関係を見据えて/地声で・20

「ボケたらイヤよね」 つい今しがたのことも忘れ、彼女は明るく言う。 不思議と笑みが跳ねて、グルリもつられて笑う。 過日の診断名は、認知症。 まだ一緒に歩いている、まだまだ歩いていく、まだまだまだ――。

浴びる/死を想う・4

痛いのは御免だ、うるさいのや、怖いのも。 死ぬ前、一挙に訪れたら、それこそ死んでしまう? 専門家は嫌だが、「死ぬ前は多幸感に包まれる」との言は信じていい。 いや、出たとこ勝負、今日の夏空を浴びていく。

微風のように/死を想う・3

大金を欲しているのは物の先、心を求めて? ならば今、ふるまう、ここで。 歌う、遠い明日へ向かい。 車座にならなくていい。 死という個別の体験だが、共通の体験を、誰もが穏やかに過ごせるといいのだが――。

夏へ向かう夏の唄/ラブソング・41

よく歩き、美味しくなるように食し、できるなら早く床につく。 もちろん、たまには羽目を外す。 洗顔は忘れても、手洗い・うがいは励行を。 そうして、力になる言葉を3つ携えて、あなたの絶望を砕いてゆくのだ。

立つんだ、情/地声で・19

今、忘れたいことはない。 忘れたからではなく、変わらず呆然としている領域があるからだ。 ただ、強風が吹く中、猫背には留意を。 食べた物を消化できないもの。 何度も背筋を伸ばし、忘れたいことへ向かう初夏。

久しぶりに連れ合いと/ベロンベロン・1

狭い店の座席は埋まっている。 気安さも手伝ってか、混雑した感じは微塵もしない。 臨時に厚いベニヤ板をテーブルとした席も。 それでも店として成立していた。 ひと息入れようと集う勢いが横溢していたからだ。

夕陽赤く2012/顔・2

遠くに夕陽が落ちていく。 ふと、人間を愛しているのかと――。 内臓をグロテスクと感じていた、まだ美しいと思えないでいる。 ただ、人間という抽象ではなく、具体的な1人ひとりの顔を思い浮かべているのだった。

合掌・33/野営生活覚書・5

夜、薪を静かにくべた。 「もう逢えないんだ」 弾ける音がして、気づく、いない者として出逢い直すしかないのだと。 グルリはやけに明るく、おれは夜空へ届く火のダンスを見つめていた。 言葉はとうに手放して。

照る照る坊主がたくさん作られた、願いは叶った/子どもたちと・6

草原を前に思わず走り出した子どもたち。 隣にいた子の手を当然のように取って。 走る走る、走り続ける。 雨でも構いはしなかったろう。 遠くの場所にいて目に浮かぶ光景。 おれも静かに、歓声を走らせてゆく。

裸足で行こう・3/内緒話・6

加齢とともに、ひねたり、落ち込んだり、からかったりすることが、かったるくなった。 逆に、若くなった? いいや、単に老けただけ。 ただ、開かれることに希望を託していく、「自分を脱げよ」と言い続けていく。

無神論者も語り掛けた/暮らしの手錠・4

神もまた、人と同様、すべてを奪う。 が、神は、人を見捨てないそうだ。 人が、神を見捨てているのにも関わらず。 どうした按配かは知らない。 潮風が身心を湿らす海辺で、見捨てない神が見捨てた地上を思う――。

呼吸・29/言葉・40

楽しみは呼吸が重なる人々との語らい。 いや、楽しくなくていいのだが。 慶びや期待、夢がなくても暮らしていくことはできる。 うんざりすることを共有、言葉で、もてなし合い、生きていく契機が微かに漂うなら。