深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

冬の前に/月下の貧乏人・43

極北の寒さがもたらす孤独。 いつか春が来るからと耐え忍ぶはずだ。 が、とろけるような温かい陽だまりがもたらす孤独だとしたら? 何をどうすればいいのか、戸惑うはずだ。 息抜きも阿片の時代に、月を愛でる。

ヤケクソな愛/ラブソング・78

今、乗っているのは、消えかかった泥舟。 今後、乗ろうとしているのは、誰も乗ることができない見栄えだけの紙舟だ。 が、大丈夫、お前がいれば。 そう、ヘラヘラしつつ歌う。 大船に乗ったような気分さと――。

何度目かの、「もう1杯だけ」/彼・34

「怒髪天を突くとはこのことか」と彼。 「憲法違反でも平気なのだから、もはや改正する必要もないな」 手酌でまたグイッと日本酒を。 「いたたまれないということだよ」と目が座り始める。 おそらく、わたしも。

あの子もあなたの子/この領土で・311

横断歩道の手前。 1人の子どもが、ポツネンと赤信号を見つめていた。 横を、大人たちが信号を無視して走り抜けていく。 朝の、いつもの時間帯、いつもの情景。 あの子の心の底に、今日もたまっていくものとは?

万年の孤独/彼・33

彼は、家族と労働のことは話さない。 「疲れているし、面倒だもの」 結果、居間のテレビの存在感は増すばかり。 思わず、脈略のない茶々を入れていた。 「じゃ、帰ったとき、天地茂と天津敏がいたらどうする?」

イメージなんていらないよ/情報前線時代・8

特に目新しいものではない。 右を左へ移動し、左を右へ運ぶ。 縦を横へ、上下を逆さまに。 そうして、キャラクター作りも。 購入させようとしているのは相変わらずイメージ、「腹にはたまらないね」という按配。

Knockin' on Heaven's Door2015/死を想う・12

これから死んでいくところらしい。 が、苦痛ではない。 どうしてなんだろう、こんな状態なのに。 分からないや、きっと死ぬ瞬間まで。 おまけにもう死んでしまうらしいから、少しだけでいい、静かにしてくれよ。

すべての命令が苦手だ/平成問わず語り・16

自分で自分に命令する幸福? なるほど確かに、外から押し付けられたことではないのだもの。 が、自分に命令はしたくない。 わたしは他者、他者はわたしだ。 押し付けたり、強いられたりすることは、すでに暴虐。

声を聴いた/マザーネイチャー・18

山から、川から、海から聴こえて来る。 大地からも。 「あって当然の、不測の事態」という静かで、低く、深い声。 一個の全体、全体の一個――。 寂しく恨んで、悲しく追い求める想いが、一挙に噴出する身心だ。

陽射しの下で/マザーネイチャー・17

陽射しの下に新しいものなし。 すべて永続する今・ここに出現している。 古代も未来も隠れ上手、見分けられず見失っているだけ。 青空に驟雨、土が明らかにしていることだ。 問うて、乞うことも古からの営為。

「こええじゃねえかよ」/この領土で・310

とうに引き金に指はかけられていた。 いっそ爽快なほど静かだが、弾丸は飛んでいる。 おぞましい集団のサイン入りだ。 撃ち抜かれないためには、せざるを得ないことが。 暮らしていくために殺されてはならない。

ないないづくし/言葉・90

ひらめかなければ書かない。 ひらめきを降らす手順がないわけではない。 そのくせ、ひらめいただけで書くことはできない。 単に技巧のことを伝えたいのではない。 それにしても何故書くのか、今日も問うている。

素寒貧/月下の貧乏人・42

ピンピン、ピンピン素寒貧。 今日も今日とて素寒貧、どうしたってこうしたって素寒貧。 ピンからキリまで素寒貧、ピンカラピンカラ素寒貧。 エッチラオッチラ素寒貧。 何だかんだの素寒貧、今日も生存、素寒貧。

シーンを描く/情報前線時代・7

追いかけるだけのマスコミ。 巧みに隠すため、時々刻々と奮闘を。 情報の横流し業者たちは、何を描きたいのだろう。 温かいシーンもまた、何やら薄ら寒い。 今ここで暮らし、ヴィジョンを提出すればいいのだが。

面倒くさい/老道・20

年を取り、実感中だ。 いろいろ面倒だなと。 嘘、ついに偽悪であれ、偽善であれ、うとましいばかり。 そうして、どうなのかといえば、単に呆けているだけだ。 「だから、どうなんだ?」という問いも遠いままで。

背景/当世労働者覚書・40

何度もなんども出かかった言葉。 が、会社員は奥歯を噛みしめていた。 何も語らない、語ろうともしない。 ただ、天井を見上げるばかり。 眼差しがゆっくりと落ち、上司に届くまで、時間はどれほど経っただろう。

週末は場末の末裔/場末宣言・1

場末に吸い込まれていく。 現行法から、はみ出し、はみ出され、なおかつ生き延びている場所。 気楽で安心できる居場所だ。 「低くあれ」と教えられた。 つか、低いところに居続けてきた自身が、もう場末なのだ?

明後日への演奏/唄・54

唄という会話。 楽器との、声との。 低く、高く、浅く、深く、あちこちを行き来する。 明日は明るい日と書くが、明後日は明るい日の後の日。 明後日を嗅ごうとしつつ、いつしか唄を通じた対話しているのだった。

誠意を尽くす/この領土で・309

蹂躙した他国への謝罪。 して当然だ。 が、和解を希求するなら、外交上のきめ細かな戦略・戦術が問われている。 無論、誠意こそ基本だ。 悪そのものを率直に認め続けることから、日々は立ち上がっていくだろう。

平和と戦争/この領土で・308

わたしたちは平和でなければならない。 戦争で亡くなられた方々を奪還するために。 生きていくのだ。 そうして、抱きしめ、対話をしていく。 英雄を生むしかない道のりは、すでにして発狂してしまっているのだ。

嵐だ、大雨だ、歩き出す/都市サバイバル・ノート279

寄り道は、実は懐かしい居場所。 紛争や闘争、戦争に寄り道はない。 あってはいけないからだ。 そも、寄り道している暇がないのである。 「ここのところ、だめだよなあ」とバスには乗らず、大雨の中、歩き出す。

あくびを奪え/この領土で・307

不測の事態のときである。 高齢の女性にも襲いかかる戯け者の男が出現。 声を失ったうえに言葉さえも消えていく。 お前はお前の夜の中をさまよい続けろ。 闇の意味さえ分からぬまま、あくびも禁止されるがいい。

単なるクソジジイ、かく語りき/老道・19

通勤時、若い男性に押されてしまう。 彼はひと足先に電車内で座っている。 真向かいに座って想う、「美しい方だなあ。でもさ」。 身体動作も含めての美しさだ。 「おれは、ああした男の女になるつもりはねえな」

夜空の輝き/月下の貧乏人・41

夜の遅いバスに乗っていた。 南から北へと向かっていたのだ、唄を脳髄で鳴らしながら。 展望? ありゃあしないさ、あったら化け物だよと、唄に言葉が被さる。 そのくせ、乗客たち同様、月を眺めていたのだった。

労働に呪われて/月下の貧乏人・40

働く、働き続ける。 暮らしていけないからだ。 相変わらずの経済・家計ばかりだ。 寂しく虚しいが、言われなくていいような件で罵倒されもするだろう。 衣食住だけで済ませられない泥水の中、月光は落ちている。

大の字になって空を/都市サバイバル・ノート278

効率ばかりの日々に、熱いお茶でひと呼吸つける。 反戦・非戦に軍隊の規律は必要ない。 ときに寄り道した道に遊ぶ。 しかも、寄り道からも寄り道を。 ときに、道ばたにしゃがみ込み、脚を放り出して、大の字に。

充実だなんて/天下のヨーガ野郎・3

充実とは何だろう。 あることだけでなく、ないことをも含めての充実なのである。 つまり、充実した、ない、ないことの充実。 ないことが単にないのではない。 座っていると、あるなしも消えて呼吸となっていく。

生きがい論/都市サバイバル・ノート277

「生きがいがなくても生きていけるようになれ」と自らに相変わらず。 望むこと自体、暑苦しい。 そも、詮なきこと。 むしろ、死を想えと。 生きがいがなくても生きていく、生きていけることこそ、拡充の一里塚。

通勤電車でうかがう/秋2015・1

始発駅で座る。 7人掛けのうち4人は居眠り、2人は小さな画面を見詰めていた。 残る1人は亡羊と。 「休日なら眠らないはずだから、ストレスなんだろうか」 わたしは鞄から文庫本を出したが、曇天をうかがう。

秋の気配だなんて/平成四季派・15

夏に、生きているだけなのではない。 夏へ向かって、旅してもいるのだった。 夏を、身心で浴びながら。 首すじを焼く陽射しの下、入道雲が笑う。 すでにして、夏の身心となってしまったとしても、夏を求める夏。