2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧
朝、目覚めるとすでに、目が開いていた。 娘が、瞼を開けたり閉じたりして、遊んでいたのだった。 宇宙には商売も関係ないが、さあてと、おれも吊り革につかまりに行くとするか。 いつもの如くエッサホイサッサ。
お前とはもう、直接、会話をしなくても平気だ。 すでに出会い、おれの一部だもの。 そう言ったら、怒るだろうか? 天才を天才的に否定したお前。 ありがとう、いつもおれの入り込める場所をとっておいてくれて。
つまりは、お前はこう言った。 「創造性は、問題を打開すべき場所でこそ使おうよ」 周囲が、恥じらいの疾走を見逃すわけはなかった。 「失敗が、どうしていけないの?」 深く真っ直ぐに、お前は問うていたのだ。
初めての再会――。 いい言葉だ、今も痺れる。 ありそうで、実際は難しいことだから。 熱いコーヒーを食卓に置けば、脳髄が呟く。 「おれは、そう、おれは、再びの初対面を果たそうとしている高齢者見習いだな」
子どもが1つひとつ暮らしを営めるようになっていく喜び。 高齢者が1つひとつ暮らしから離れていく哀しみ。 危ういバランスをとる天秤――。 おれのいる場所だが、両者から抱擁されている幸を、抱きしめている。
家の中には学校や食堂、仕立屋や図書館、介護施設もある。 狭すぎる空間だとしても。 そも、家庭の営みが外在化、都市は出来上がったのだ。 家にないとしたら山に川、海――。 春、出向く場所はすでに決まった。
わけありの一言では済ませられぬ過去。 死ぬまでに逢いたい人々がいるだけだ。 目の前で心底、寿ぎたいのだった。 昔、出逢い、今、再会したい生命たちの、あてどなき流れを。 眼前には遺影、だったとしてもだ。
花をひたむきに見つめるお前。 日差しの下、佇む姿は刺なき花か。 振り向き、どうにか思いついた夕食をポツリと。 おれは酒さえあれば満悦だが、今宵は呑むまい。 小さいお前と、たっぷり過ごすのだものな。
山道でのことだ。 深々とお辞儀をした。 「後頭部を見せるのは、相手に自らを差し出すこと」といったような言葉を体感しながら。 頭を上げて、長く見つめ続ける。 獣の死骸が土に同化していく様は、美しかった。
暮らしの羅針盤としての言葉の耐用年数が、急激に短くなった状況下、 それでもなお、手放さない言葉がいくつかある。 ついと思い出しては、豊かな言葉・言葉の豊かさを体感すれば、 自然と身心の背筋は伸びている。
今も、身体が資本さ。 寂しいね、嫌だねえ。 かくして二日酔いのとき、遠くから聞こえてきた、おれの噂話。 寝たまま小躍りしたさ、実は布団の上で。 子どもに思われるだけで至福さ、「いやあ、起きるとするか」。
やさぐれているね、溌剌と。 たとえ神が降りてきても神不在の如き態度が好きさ。 どこへ行くか、聴いていい? 応えないことは分かっているし、応えなくていいんだよ。 ただ、雨が上がるまでは一緒にいようか。
神より、子どもたちに身を捧げたい。 抽象的な子どもたちより、顔が見える子ども1人ひとりに向かうのだ。 わが子? わが子自身にわが子を捧げることが、小さいながらも始まっている。 関係への蕾が咲いたんだ。
できれば言いたくない言葉、「どうでもいいさ」。 わたしは通り過ぎることにしよう。 公理を装う私事や、ついに何も示していない定義、豪華な食卓に並ぶ屈託の傍らを。 亀の目覚めと空気の沸騰を待ちわびつつも。
関係は相性が合うだけでは続かぬが、 相性が合わなければ続けるのも困難か。 やはり衣服に限らず、相性が合う奴と、余分なものを脱いだり、 脱がされたりするのは楽しいものさ。 仮に酷く衰弱していたとしても。
変革前・中・後の多くの死は? それでもなお、「革命の存在から存在の革命へ」なる言説さえ夢想した歴史的事態。 止まる定義はもういいさ。 冬の水を湯にできたとき、古の人々も体感したはずだ、「暮らせる」と。
後は笑うしかないほど、先立つものがないのは同じさ。 キリンの骨折した首の如く暮らしてきたわけではないのに。 ないものはない、ないものはないのだ。 かくして、ここ当分、笑って過ごすことができるのだった。
宇宙には性差や階級、実験や試験がない。 平日・休日の区別さえ。 人智届かぬ拡がり。 「宇宙の中の個・個の中の宇宙」と月並みな言葉を転がす。 何とも陶然としてきたのは、夜に染まった梅の香りのおかげさ。
寒く暗い住宅街を、歩いて潜り抜けようとしていた。 「寂しいもんだな」 すると明るい1点、電話ボックスが。 電話をする時間ではなかったが、中へ。 連れ合いに、携帯から「帰宅中」とだけメールをするために。
「大人って何?」と聴かれても…。 そも、そうしたことを気にしないのが大人なんだ。 愛や夢を必要とせず、暮らしを丸く楽しむ術に長けた方もいるよ。 理由? 生きているだけでありがたいと熟知しているからさ。
生きているだけで人の役に立つ道筋を夢想した。 その場所ではきっと、意味も必要がなくなり、息がしやすいのだろう。 ただ在るだけで、よい気持ちになれる場所。 いつ聴いても新鮮な言葉が行き来しているはずだ。
いるんだよ、本当に。 どんな人かって? 「今どき、ちょっといないぜ」って按配でさ。 一言で言え? 長く底の底、どん底にいるんだ。 そのくせ、平気で人を気遣える奴なんだよ。 な、今すぐ逢いたいよなあ…。
地上で義に舞うことを味わうと、 ロックも単なる表現領域だなと。 ロックでさえ煩わしいと感じるときがあれば、 ついと鳴り出す新たなロックもあるだろう。 春が立ち、地上がステップを踏んで生き返ってきたね。
もとより若い娘を次々と殺す不信感はなかった。 ただ、生き延びるための共生について、思いを膨らませてきたのだ。 読みたい・読むべき・読まざるを得ない言葉は、この手で記す? 朝日も少しは顔を出すだろう。
千の朝に千の言葉を記してきた。 千の言葉は1つの言葉に向かい、 1つの言葉は数え切れぬ思いとともにあるだろう。 初めの言葉、「日々の呼吸が、深呼吸になればいい」を想起して、 さて次なる千の深呼吸へ。
路上から階上を見る。 部屋は真っ暗だった。 妙な予感が走り、階段を駆け上がる。 ドアを開け、電気をつけた途端、驚くわたしに笑い声が。 「驚かすなよ」と呟けば、妻子は夜空と路上を交互に眺めていたという。
消費者・労働者、何より生活者として期待されてはいない民。 その血を吸う代表者たちは今や、被害者意識も独占か。 共倒れなる言葉も忘れた挙げ句の果てに。 共生の2文字を今日に記す、人非人から身を剥がして。
冬の夜、所用で屋外へ。 娘が母を見上げて言う。「寒いね」 深く同意する声。 手袋は忘れていたが、2人、星を見つけては指で示し、名前を探った。 ついと、母は娘の手を取り、あたたかい息を送る、幾度も送る。