2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧
痛い風が一瞬休んだとき。 「自分の健康に照れなくていいが、たまには恥じていいんじゃないか」と。 言い訳だってしていい。 再び立ち向かう場所が観えたのなら。 生意気だが、自分の元気が疎ましいときもある。
戦場体験を語る元兵士。 陰惨な光景は届きにくい。 壊れかけた肺が、伝えようと必死だ。 言葉がついに人々の胸に落ちたのは、亡くなっていく戦友の姿が語られたときである。 死者の沈黙が眼前に見えたのだった。
強く、速く、高く、しかも粘って――。 ただ、スポーツ選手は激しい運動故、免疫力を落としやすい。 結果、風邪引きも多いという。 とどのつまりはサドとマゾの混合体と言えば怒られるだろうか? 歩いていくさ。
赤い。 腕を伸ばして、手に取る。 少し上に放り、丸い手応えを受け止めると、適度な硬さが伝わってきた。 皮をゆっくりと剥き始めていく。 そのときだ、「リンゴの皮のように薄い大気」との話を思い出したのは。
若いとき、はみ出されて薄暗く、間抜け故、潔癖だった。 孤独・孤立ではなく、つまりは爪弾きの自覚なき単なる呑気か。 地べたに平気で寝っ転がり、天を睨んでは高いびき。 今や何だかご免だが、今も同じ場所だ。
花が咲いたよ、花が。 いいなあ、あの挨拶の仕方。 つい先日まで、姿形も観えなかったのに。 まるで突然、現れたかのように、お辞儀しているんだよ。 おしゃべりはできないけれど、対話はできるよ、きっと、花。
「ロックは死んだ」との物言い。 ただ、神同様、今も人々の中で生きている? あるいは、神同様、生まれていない? 実は、生まれずに生きており、死んでもいる三位一体状況? 大音響の中、静かな声を聴いている。
音楽は運動、運動は音楽。 音楽のため、運動を開始しても楽しくはない。 運動のため、音楽を利用しても愉快ではないだろう。 音楽の運動性、運動の音楽性を同時に浴びていく。 少なくとも、深くなってゆくのだ。
歩いているとき、ふいに屈託が芽生えた。 「生きることによって生じた問題は、より生きることによってしか解決しない」という言葉を思い出す。 結果、さらに問題が発生するのだが。 歩いていく。 空はまだある。
素晴らしい絵画と出逢った。 が、「陳腐なイメージだな」と感得を。 いや、言い換えよう、すでにイメージ自体が陳腐だと。 長くボールを蹴っていないと気づく。 「そうだ、キャッチボールもしていないよな」と。
腰を低くして周囲をうかがう。 隙が見えたら一気に反撃だ。 罠だとしたら? そのために逃げ足を鍛えておくのだが、肝心なのは逃げ場所はないとの心得。 脚が自分を運んでくれなければ、「はい、それまでよ」さ。
お前の名を呼ぶ。 変哲もない呼び名だが、無意識では想いがこもっている。 願いはたったの2つ。 まずは病があっても健やかなこと、そうして愛することができる心のたえずの発生。 無理難題とは分かっているが。
被害を蒙って、一段と弱き者へ。 立ち向かっていくべき? それができればいいのだが。 立ち上がれぬことさえ往々にしてあるのは、痛みの大きさ故。 傷は癒えないが、呼吸で吐き続ければ、ふと端緒につくときも。
「貧乏なことを気にするな」なんてバカな言い草だ。 ただ、たまには豪華にいこう。 思い切ってラーメン屋で餃子を足せばいいさ。 銭湯の溢れる湯を眺めるのも悪くない。 身心のバネに油をさすのだ。
ばったもん? わたしを呼んだのかと思ったよ。 ここはひとつ、社会の善意化ではなく、善意の社会化を。 状況と対峙することなき安楽に興味はない。 いいだろうなあ、流通の必要もなく、暮らしに息づく善き想い。
プライドを捨てた働く彼の、実は強さ。 後は労働そのものへと向かうだけだ。 勝つためでなく、ただ生きていくためにと意識も変容。 成功はしないかも知れない。 が、生きていく手がかりはつかんでいるのだった。
2人暮らしの夫婦が、旅支度を整え終える。 若者たちが広場で肉を焼き始め、車椅子の高齢者たちは花を愛でていた。 蒼天の下、子どもらの歓声も。 その後のことだが、夫婦は今もなお家に帰ることができずにいる。
めざしていても、たどり着けないとしたら? 目的地の変更を。 めざすこと自体もいっそ放棄する。 その結果、立ち上がってくることに賭けてゆくのだ。 闘うことをやめる効用にすがるしかないときもあるのだった。
どうしても見ておきたかった、いや、体感しておきたかった。 が、電車は逃げ、信号は決まって赤。 足はもつれ一段と焦るばかり。 空をやはり見上げるしかない一瞬。 時間は過ぎていたが、諦めるわけもなく――。
譜面を読めない美空ひばりは一発で決めた。 一方、江利チエミは何度も録り直したそうだ。 何故か。 納得いかなかったからだという。 脈略なく、表彰台の上、黒い革手袋の拳が天に突き上げられた瞬間を思い出す。
世代論に回収して、呑気にはしゃぐ輩へ向かって吠えたい。 「30歳以上を信じるな」 昔の文脈とは、逆転させた感覚で。 大切なのは同時代人。 ヴィジョンを開示した死者たちと出会い直し、語り合っていくのだ。
お先真っ暗クラのクラの介。 どなたもこなたもオロオロウロウロ、あらまのどんなもんだい。 夕陽が泣けばメソメソと? つまらなくたって大丈夫、面白くたって厭きは来る。 おててつなぎ、真っ逆さまはご免だよ。
初めて出逢った際、「嫌な奴だ」と思い、そのくせ、「懐かしいな」と体感。 爾来、どれほど時が流れたか。 今、再会すれば、「いい奴だな」と、しみじみ実感。 「いやあ、新しいなあ」とも。 別々に生きていく。
つないだ手を離し、スタートラインまで、小走りに。 合図までの時間は短く、永遠のよう。 青空を一瞬、眺める。 ゴールまで、たった1人で走り抜けなければならない。 その後だ、離した手を再び求めていくのは。
障がいのある女性が、聴衆を前に語り始めた。 静かに、熱く、ついに諦めることなく。 身体を壊された怒りもあったのだろう。 が、問うていたのだ、「このままでいいの?」と。 心までは決して壊されることなく。
読む際の心がけは、言葉誕生の背景、送り手の意図の読解。 記すときは、できれば懐に森と風、川と海を入れておきたい。 語り合う場所には内容よりも大切な意味が渦巻く。 共振は遠い? かすり合うだけでもいい。
今後よくなることはない。 身体の融通はきかなくなるはずだ。 将来がないのだ、心は晴れないだろう。 が、そこで生きていく、生きていかざるを得ない。 「仕方ないな」と呟きつつ、されど「天はいらぬ」と強く。
1通のはがきが届く。 「息子を亡くしましたが、この悲しみは誰にも分からない」 身心からため息。 分からないことは分かっている。 そうして、便りを記し届けようとするまでに至ったとは、感じているのだった。
お金には恵まれて来なかった。 いわゆる知識もないに等しい。 しかも、病を得た独り暮らし。 不幸と言えば不幸の極みの如き日々。 「ただ」と彼は笑う、「ただ、家族という桎梏は消えたのでマシだよ」と真顔で。
遠くから、祝福の唄が流れて来た。 ためらいがちの、か細くて小さな声。 聴こえていたものの、多くは聴いてはいなかった。 彼女は、ふと我に返るかのように耳を預ける。 そうして、木霊のように口ずさみ始めた。