深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

木に登る/娘と・76

お前と登ったね、ほら、あそこ。 もう高くは感じない? ただ、下りるときは苦労するものさ。 あの木、いつまでも立っていて欲しいなあ。 よし、久しぶりに登ろうか。 見慣れた景色も、きっと違って見えるはず。

日本の男たち/呼吸・27

慕情寺山修司、低人辻潤、青春宮谷一彦、解放芥正彦、純情高倉健、解体吉本隆明、均衡鶴見俊輔、瞬間谷川雁、極北金子光晴──。 まだいる、まだまだいる。 底の声がひと呼吸つけさせてくれた。 が、今なお底だ。

つい昨日のこと/ラブソング・29

三島由紀夫の死に潔さを感じられないできた。 やはり思う、「想いは勝手に発生するわけもない、2人以上で根拠を受け止めているのだ」と。 三島のみを語ることなかれだ。 今日もここにいられる、手を使うお前と。

ハローアイラブユー2011/言葉・30

教えていただいたことは、実践しないと忘れがちだ。 ただ、「○の描き方は、特に習っていなかったなあ」。 その両方の幅の中で、今日もまた話し終えたときのことが想像できない。 だから、そう、だから話すのだ。

連帯2011/状況から・31

同じ懸命になるなら、戦より友愛。 新旧に関係がない考え方だ。 要は手が行き届いているかどうか。 木々の下、そう、声がした。 もはや勝とうとしない、負けようとしないで心を尽くす、連帯を、ただ連帯をと。

風邪かな?/娘と・75

風邪? 学校へは行かないほうがいいな。 おクスリ? 今はのまなくてもいい。 眠り続けることさ。 実はね、風邪は成長のために大切なことなんだ。 明日には会える友だちのことを思い、ゆっくり休むことだよ。

ね、一緒/子どもたちと・1

「おったあ〜んっ!」 両手に荷物を抱えた女の子が、叫びながら走ってゆく。 友だちを追いかけていた。 振り向く彼女にたどり着き、くわえた煎餅を割って差し出す。 そうして、「堀田さんっ、一緒にね、帰ろ」。

一言/状況から・30

昔の母は偉かった? 確かに。 ただ、今のお母さんたちもだよ。 かつて、多忙な折、子どもたちへ簡単に発した促しを今、伝えられないのだもの。 「外で遊んで来なさい」の一言を言えぬ屈託とつき合っているんだ。

日が経つほどに/身体から・54

今日、病で倒れたとしても感謝する。 もちこたえてくれた身心に、「ありがとう」と。 酒にストレスまみれで、ここまで暮らしてこられたのだ。 放射性物質の件では殺意さえ覚えるが、感謝の念は深まるばかり──。

フリー・ダンス/身体から・53

例えば手が勝手に動き出す瞬間をつかまえる。 蛇や豹の動作に見えれば、微笑むばかり。 その後、立ち上がり、身体が勝手に動くに任せよう。 身体の限界は感じるが、生命の躍動は実感できるはず。 試すと分かる。

フリー・ソング/身体から・52

楽しみがある。 人影のない里山を歩きつつ、大きな声を出し、好き勝手に歌うこと。 こだわり、こわばり、こじれたことも溶けてゆく。 フリーにはなりきれぬが、それもまたよし。 道が体内から発生してくるんだ。

汚れた肺に熱い丹田/呼吸・26

人と人との間で動く物、ときに植わる物として呼吸してきた。 浅いときのほうが多かったが、何とかやりくりしてきたのだ。 悦びは自分と自分の呼吸が重なること。 人間・動物・植物の呼吸を同時に体感しながら。

健康の原則/身体から・51

腰痛や歯痛、屈託があれば身心を感じてしまうもの。 つまり、健康とは身心を感じていない状態のこと。 その文脈に則れば、「これがおれの暮らし」と感じていない今だけは慶賀なりか。 おれはおれも感じていない。

声を聴く朝/天下の太極拳野郎・5

太極拳で身心の声を聴き続ける。 声のつかまえ方、聴き方まで、身についていくだろう。 聴いた後の対応法もまた。 老若男女が参集する朝の公園では、多くの声が舞う。 喧騒とはならず、静謐、かつ穏やかである。

休日の団らんまで、あと少し

リュックザックには大量の絵本。 子息は、「父さん、ありがとう」と笑顔で言う。 「母さんのほうが大変さ」 父より大きい荷物を抱えた母は、図書館出入口付近で待ち惚け。 買い物袋からはネギが顔を出している。

日本の四季/状況から・29

母を短期間で看取ったときのこと。 「四季が救いだったな」と体感を。 炎天の初夏から銀杏並木の晩秋まで、濃く豊かな関係を暮らしたのだ。 ただ、今や季節はのっぺらぼう。 四季派ラディカル、そう呟いてみる。

骨まで愛して2011/娘と・74

昔、「早く大人になりたい」といったポップスがあった。 お前はこれから、同じ思いを抱くことができるのかな。 そも、同じ文脈の唄は今、作れるのかな。 この時代、骨のみならず、内臓も愛する勢いが必要なのか。

公園で突然の挨拶/状況から・28

公園には行き去る人々を眺めるお年寄りたち。 まだ少しだけ遠いことを待ち続けていた。 『イマジン』は相互扶助と訳したいなあ。 知らぬ子がふいに、「こんにちは」だってさ。 もちろん、応えたよ、「おっす」。

山へ・1/身体から・50

登山中、汗がふきだす瞬間がある。 勧められたことではない。 登頂とともに引いていくのだが。 下山時、ゆったりと汗をかき、全身で足下を確かめている。 結果、周囲を体感、道がより視えるときもあるのだった。

ここはどこ?/状況から・27

子どもたちが野を走れば、皆が皆、声は出さずとも声援を送る。 草の上、横になれば、空に目を細めもしよう。 家には安心で美味しい食べ物も待つ。 ただ、そうした日々が奪われ、一体ここはどこだと言うのだろう。

秋空の下、湯につかる

朝、露天風呂へ。 天を雲の龍が悠然と泳いでゆく。 谷川雁の詩『雲よ』をどうしても思い出す。 隣には湯につかり、「いてててて」と発しつつ満面の笑みの爺さん。 おれも同じ表情ならいいが、知る由もなく潜る。

平成版自己紹介・3/状況から・26

おれはつくづくお気楽。 即、平和に導けぬ阿呆だが、外見のジジイぶりで許されている? ただ、出世に接待ゴルフ、今日だけの勧善懲悪はいらぬ。 痺れる言葉に出合えば歓喜の猿、安上がりな野郎だと満更でもない。

アイ・ランド/状況から・25

浮かれる楽しさから、澄んだ理解へと導かれる落ち着きへ。 たどり着けぬ明日を求める脳髄から、死者と共に暮らす心へ。 もういいよな、張りぼての明るさ。 取り戻そうか、質感に満ちた暗さを。 目は直になれる。

奪還者/状況から・24

バブルの恩恵、露知らず、迎え撃つ姿勢を保とうとしていた。 夏の閉じた部屋、冬の明るい公園で笑い合いながら。 お笑いさ、今も奪われていく。 決めの言葉の罠に気をつけるよ、嘘や悪を見抜こうとするだけでなく。

老いて初秋/状況から・23

匂ってきた漂ってきた、どんどん蠢いてきた、沈んでいたこと。 深海魚は海上で破裂する? 一方で流れていく消えていく、どんどん忘れていく、昔のあれこれ。 どうするどうしたい、どうなのさと三鷹駅前の月――。

10月6日、朝

いつもの朝と様子が違う。「どうした?」 そばに寄って来た娘が小声で問う。「何時に帰って来る?」 痛烈な問いには応えず、ゆっくりと話し掛けた。「大丈夫、覚えているさ」 ロウソク9本はもう、用意してある。

罪とバチ/状況から・22

何より重い罪は自分を欺くこと。 そう語った方がいつしか様変わりするケースに、憤りを感じなくなった。 騙していいさ、卑怯になっても、卑屈になっても。 ついに立ち上がることを、無意識が忘れていないのなら。

時代は変わる・変える/状況から21

物珍しい小動物たちが、眼前を素早く逃げていった。 遠いとおい昔のこと。 そうだ、「だからどうなの?」に応えない事実指摘主義に、接続したくはなかったのだ。 あたりを窺い、呟く。 「今も命がけの時代だな」

部屋に漂う香/合掌・18

「それで、ダンナが何と言ったと思う?」 「分からないなあ」 「お前は料理が下手だが、いつもとても美味しい食卓だった、だって」 「そうか…」 彼女は笑い放ち、彼の微笑む写真を眺めてから、再び線香に火を灯す。

ロンググッドバイ2011/状況から・20

おれたち、もう駄目なんだろ、本当は? 遠慮はいらない、断言していいんだ、潮時だと。 耳元での嘘八百の囁きは、疎ましいばかりさ。 ねえ、臍を公開されて、何故、今日も隠そうとするの。 まさか、恥ずかしい?