2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧
飢えをごまかせて、 雨露、寒さをしのげれば、 いいだけなんだ。
ていねいに耕し、 ありがたくいただき、 しっかりと出し、 ゆったりと眠る。 そうして歩くことを厭わず、 唄の1つ、2つ。 で、今宵この夜も、 熱い1本の酒を。 それだけで、 本当にそれだけで満足できるんだ。
家族1人ひとりの 心音を聴く。
家族3人分の夏野菜なら、 4坪の畑で自足まで届く。 しかるに、夢見るは、 都市の舗道脇に長く、 どこまでも長く続く野菜畑。
いっそ、この際、 夏空のもと、大雪が降り始めたり、 曇天で太陽が照り続けたりしたら、 薄気味悪くて、 とても楽しいのにね。
大汗をかいたサウナを出て、 全裸で大雨に打たれ続けた。 身体は、 内向的解放感、 外向的求心性に満ち、 微妙な充実感を嗅ぎ分けて、 鮮明に立ち上がっていく。
喜ぶなら今すぐ、全身で。 怒るなら誰もいないところ、1人で。 哀しみ、楽しむならいたるところ、みんなで。 生きるなら今日、 死ぬなら明日の先の先。
お人好しの間抜けたちも、 気楽に暮らせる、 それこそが先進国のはずだと 分かっているくせに――。 ややわあ。
快汗による わが快体。
厄介なことを簡略化すれば、 細かい襞を見失い、 肝腎なことを取りこぼすもの。 だから、 やさしくなんかしないで、 難しいままでいいのよ、 お願いね。
相変わらず吹きさらしの場所で、 私生活とは無縁のまま、 市場に追いやられているが、 何だ、 この清々しさは、 この寂しくも、 真新しい朝の素晴らしさは。
人の暮らしは、 沈黙している時間のほうが長い。
手に筆記具を持つ。 1本の線を引く。 描かれた線を眺める。 以上の行為を、 毎日決まった時間に、 1年間行う。
夜半、 稀に自分のいびきを聴きつつ、 タオルケットをはねのけて、 寝巻きをたくし上げ、 腹を出していても、 夜明けには、 敷き布団と畳の間に、 足を忍ばせている。
森の中の閑散としたプール。 その奇跡のような情景に入り込み、 浮かび、泳ぎ、歩き、天を仰ぐ。 永遠の夏を渇望し、 夏の永遠を瞬間的に体感しつつ、 身体は笑っている。
水をのむ。 できるだけゆっくり、 心を込めて。 朝一番の身体への挨拶。
波波波波波。 波、波、波、波、波。 波・波・波・波・波。 生きている乗り物に、 全身を預ける忘我の快。
夕食には熱燗一本。 そうして、 あやめられた魚、 艶やかなりき。
手をつなぎ、 輪を作れば、 空洞の いっちょうあがり。
でたらめな唄を めちゃくちゃに歌いながら、 自転車のペダルを漕ぎ続けていた。 で、急ブレーキ! 路上にセミがいるではないか。 今にも破裂しそうに、 激しく鳴き続ける。
足を高くあげて、 オートバイに跨る。 簡潔に積まれた荷物。 エンジン音が腹に響きだす。 軽く手を上げ、 出発を知らせる。 背後から、 今にも泣きそうに母親が声をかけた。 が、素早くギアを変えた彼には、 もう聴こえない。
たった今、 死にゆく者ほどに 生きておらぬぞと、 風鈴の音、 響き渡る夜明けに尿意。
「最高だね」 婆さんが言う。 グルリには誰もいない。 「そ、そうすね。泳ぎましょうか」 朝のプールでのことだ。 「別にいいよ」 見れば片足がない。 「ふざけろ」と思いながら、 婆さんを背負い、 水の中を歩きだす。
炎天下の舗道、 前を歩く女性に ふいに音楽が降ってきた。 反射的に軽く踊りだす。 目撃した私の脚もまた、 歩くのをやめ、 勝手にステップを踏む。
小学生の男の子が、 上半身より大きなリュックザックを背負い、 駅の階段を上っていく。 たった1人で、 拳を握り締めて。 視線の先には、 身体と同じ夏──。
家族三人、 川の字で横になる。 夜半、 下の字を書いたり、 上の字を描いたり。 ときに二の字なので、 起き上がって見やれば、 板の間には、 自分を含めた誰ぞがいて、 夜明けがやってきている。
水の上に浮かぶ。 大の字で。 身体はもう、 感じていない、 身体を。
散らかった狭い部屋で、 母子が言葉を交わすことなく、 しかし、この上ない和やかさとともに、 つましい食事をとっている。 風もまた、夜の馳走として――。
セミの鳴き声が、 耳の奥に住み出す中、 1本の大木が作る木陰で、 静寂を聴いていた。
平地で 綱渡りしている日々にも、 風鈴の音。