深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

まだ生きている/老道・41

もうすぐお別れのときだ。 彼女は、彼の顔を視てから、その手を取る。 そうして、手を、自分の性器に持って行くのだった。 彼の閉じ続けていた目は一瞬、動いたかのよう。 夜には早い時間帯、居間は静かだった。

今は幸せかい2016/自転車徘徊族・1

自転車で徘徊を。 老夫婦がスマホで写真を撮り合うシーンと出逢う。 明日、いや、今夜、何があろうと今は幸せ。 寒くなる前の赤や黄という贈り物が降り注ぐ。 遠くの山の川の音が一瞬聴こえてきたような感覚に。

土への望郷/歩く・36

石の歩道を歩いているとき、足先が冷たくなる季節だ。 痛いときさえある。 空を仰いでも、暖を取れるわけでもなし。 が、枯れ葉が舞い落ちていれば、温もりを体感できる。 土の匂いを嗅ぐことができるのだった。

冬眠の季節に/この領土で・369

今、不機嫌に抗うこと、上機嫌というより単に浮かれている在り様にも。 逆に不機嫌が蔓延する? が、関係は可変的だ。 冬眠中の生物もまた、呼吸を重ねていく。 排他性こそが病、不治の病を助長させる病なのだ。

抱きしめたい2016/プール絶景・15

温水プールでバシャバシャと、父親へ向かう幼子。 泳げたことの喜びが、顔に視て取れた。 わずか1メートルに満たなくとも。 きゃっきゃと。 何より父親に抱きしめられた喜びが、周囲にも伝わってきたのだった。

夕陽は赤く2016/当世労働者覚書・71

働いた。 その後、少しは休日を愉しもうと歩き始める。 歩道は日陰だったが、「そうか」と。 陽射しがビルの高いところを照らしていたのだ。 広い場所へ行こう、夕陽は紅く空を焼き、暖かい場所のはずもの――。

ソーシャルネットワーク上で/情報前線時代・16

パソコン画面上で流れていく、膨大な数の写真。 わたしの写真もまた、その中で流れていく。 特に流れたわけでもない1日だったけれど。 落ち着きどころは、あるのだろうか。 たとえ消えるばかりだったとしても。

地震・雷・家事オヤジ/些事の日々・211

一瞬、めまいかと体感し、目覚めた。 家族が何やら騒いでいる。 「あっ、地震だったのか」と気づく。 ひとまず、めまいでないことに安心を。 と同時に、安心できないまま、何がどうしたのか、知ろうとしていた。

加山雄三の『夕陽は赤く』/唄・65

昔、シングル盤のレコードを購入した。 そうして、幾度いくども繰り返し、盤を回したものだ。 飽きもせずに聴いていたのである。 唄が体験になり、唄という体験へと。 当時の唄が老い始めた今、口をついて出る。

毎日という旅/些事の日々・210

旅に出る。 期待もあれば、不安も生まれるだろう。 周囲を用意周到に警戒しつつ、晴れやかに挑んでいく心も。 そう想い至り、「えっ?」と。 何だ、周囲も艱難辛苦だらけ、毎日が旅なのではないかと、あんぐり。

信号は変わる/この領土で・368

立ち止まっているとはいえ、赤の信号は、いずれ変わっていく。 夜明けの来ない夜はないが如く。 しかし、すでに赤信号だらけなのである。 あの土、この砂、その石――。 暗いくらい夜明けを迎えていくのだろう。

国家を超えて/この領土で・367

商売相手を蹴落とすことは、日常茶飯。 相手が落ちれば、嬉々とする。 「やったね!」の明るい声が木霊して、微笑みさえ。 が、国家レベルで発生すれば? グローバル化の今、企業群は国家を超えて跋扈している。

汚れたままだが/老道・40

一生が長いかどうかは分からないが、気づけば老いの道。 偶然か必然かは分からないものの、つながっていきたいと。 となれば、残すものでだろうか。 例えば、水。 美しく、何より美味しい水を、残せないものか。

「んな、バカな」/歩く・35

労働以外で急ぐ必要があるものは? 分からないことはあり続けるのだろう。 ならば、慌てることもなかろうに。 どうせ断頭台へ向かうのなら、スポーツカーで? そんなバカなことがあるものかと、今日も歩き出す。

安寧の場所/死を想う・18

死は、やはり恐怖の対象である。 あらためて何故なのだろうと。 この世から、消えてなくなるからだろうか。 仮にそうだとしても、死以外に怖いものは、まだまだある。 疑心暗鬼の世で、死はむしろ安寧の場合も。

見せようとはしない/天下の太極拳野郎・16

見せようとしているだけでは届かないだろう。 大切なことは何か? 全身心を体感しながら動いていくことだ。 ときに潜り切ってしまうときもあるだろう。 そのときこそ、視られて妙でない事態が発生しているのだ。

みな、死ぬ/些事の日々・209

過去は振り返らず、単に放置しておきたいときもある。 問題は今としての過去なのだ。 あるいは、現在の中に蠢く明日。 みな、死んでいく。 好き嫌い、良い悪い、損得に振り回されながら、あれこれ忘れる日々だ。

割れた鏡20162016/当世労働者覚書・70

目覚めたら、「えっ?」。 鏡に映っていたのは、赤の他人のような顔のジジイ。 割れた鏡ではない、普通の鏡だった。 取り合えず、「てへっ」と、「おはよう」とを同時に。 労働をさぼって歩き始めようかと――。

呪詛する人たち/彼女と彼・5

退職するとき、彼女は想った。 「何故、わたしが…」 ほどなくして晴々と、「何故、こだわっていたのか」と。 その後、続いて会社を去った彼。 今なお、「何故、おれが…」と呪詛、安酒をあおる日々なのだった。

呑気が何より/平成問わず語り・31

若いとき、ブラブラしていた。 老い始めた今、とても懐かしい。 何故か。 誠実というより、切実な日々に、すっからかんであっても、基本的には呑気だったからだろう。 ブラブラできたら、どれほどいいだろうか。

広告まみれ/この領土で・366

顔を上げる。 どこもかしこも広告だらけだ、町の中、電車の中、公共施設でさえも。 小さな画面に、大きな画面の中もまた。 「疲れるよなあ」 目を開いたまま、実は閉じていて、1歩いっぽ、歩いていくしかない。

窓の外を/車内慕情・3

何もかもが娯楽化していく。 食事に睡眠、運動も。 旅は当然、歯を磨くことさえ。 怒られるだろうが、差別も、戦争も愉しみの対象のよう。 電車の座席でテーマが重い文庫本を開いたまま、窓の外を眺めるばかり。

生死を同時に/姿勢・17

「結局、人は死ぬ」 今朝、記していた。 そのことを忘れた経済偏重、しかも近視眼。 死を受け入れられる暮らしをと静かに希求する。 今、このときに、産まれる子もいるが、去っていく人もいる文脈が基本の姿勢。

ここのこと/当世労働者覚書・69

何故ここにこだわっていたのかと。 強く望んだわけでもなければ、想いを無視していたわけでもない。 単純に離れるのが嫌だった? 理由はよく分からない。 離れて月日が経てば、どうということもないのだろうが。

嫌な話/都市サバイバル・ノート287

騙されやすい方が。 人を見抜けない方もまた。 が、ことは簡単なのである。 要は、お金が行動原理、いいや、場合によっては、異性やヤクもか。 得しようというだけなのだから、そこがどこか判断すればいいのだ。

鍵/平成問わず語り・30

鍵を閉める日々は幸せかどうか。 かつて、盗まれるようなものは持っていなかった。 結果、鍵を閉めない暮らしを。 帰宅すると友人が寝ていたことも。 盗まれる物を持たないことは何とラクで清々しかったことか。

微笑ましい大便/些事の日々・208

「ああ、気持ちよかった」の声に微苦笑を。 ただ、みなの視線は彼の指先に。 用足し後の全力の賜物がついていたのである。 一同、いわゆる固まった状態に。 静かさは打ち破られ、てんわわんや、大騒ぎの事態に。

昼休みに/暮らし・23

まず腰掛ける場所を決める。 しばらくすれば、いくつかの想いがわいても来るだろう。 まずは直感にしたがい、うろうろし始める。 概ね、商品ではなく、少しでも自然の満ちた場所へ。 握り飯を頬張る時間である。

伸ばして行く/幸福論・14

幸福が何か、よく知らない? 今日たった今、暮らしていける幸運を想うばかりだ。 が、想う、「自分を幸せにすることだ」と。 無頓着過ぎたかも知れない。 家族や隣人、あるいはと伸びて行くものはあるのだから。

不届き者/彼女・26

人の手が必要な局面に遭遇を。 だから、手を借りた、当然のように。 とはいえ、相手の善意は無視。 しかも、助けられたにも関わらず、感謝の言葉も伝えなかった。 好まぬ人であるが故に、それで構わないのだと。