深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

徘徊だらけ/老道・203

認知症による徘徊。
ふと想うのだった。
「徘徊だらけでいいのではないのか」と。
高齢者が動いているとき、ともあれ安全で、何より安心している。
そこまでいけば、この国も、「見捨てたものではないのに」と。

▲『砂場』(写真)
久しぶりの場所。
コロナ禍、遠のいていた。
やはり、砂の惑星ってか?

www.youtube.com【雁氏を再び/今日も少しだけ】
 過日、谷川雁氏の歌詞を引用した。
 合唱曲のシリーズ『白いうた 青いうた』の1つである。

 シリーズは、作曲家の新実徳英氏との協同で、1989(平成元)年から1995(平成7)年まで作られていたようだ。
 曲が先に作られ、後に雁氏が歌詞を記したという。
 100曲を目標に作られていたものの、雁氏の死により53曲で止まったとも。

 気になり、雁氏がコラムを寄せている『うたの不思議』新実徳英・著(音楽之友社)という本を、図書館から借りてきた。
 晩年にいたるまで詩心を決して失っていなかったことが、あらためて了解できた。

「あの政治性を抜けば、中原中也のように、残っていくのに」
 そうした指摘を想起したものだ。

 長くなるが、今日も引用したい。
 例えば、『十四歳』。
「おっ、いかす」と。
 こうだ。

 ♪はなびらのにがさを
 だれがしってるの
 ぴかぴかのとうだい
 はだしでのぼったよ
 かぜをたべた
 からっぽになった
 わたしいま十四
 うみよりあおい
 はなびらのにがさを
 だれがしってるの
 だれが

 これを読んだ後、しばし感銘を味わっていた。
 14歳への肯定。
 歌詞だけで十二分に響いてきたのである。

 あるいは、『壁きえた』。
 これもまた、素晴らしい。

 ♪にしと ひがし
 そらを つなぎ
 よるの みやこ
 かべは きえた
 どよめく とおり 
 ぼだいじゅ ゆれる
 グーテンナーベント!
 ローザ!
 いきて あえた
 もえろ まわれ
 ひとの まつり
 もえろ かわれ
 ひとの れきし

 ベルリンの壁を取り上げたものだろう。
「ローザと来たか」と。

 それにしても、合唱曲の他人行儀なところが苦手だ。
 響いてこないのである。
「もったいないよなあ」

 正攻法とはいえ、100円拾っただけなのに、1万円拾ったかのような歌い方に違和感があるのかなと。
 もっと、いろいろなパターンがあっていいと思うのである。

 ちなみに、貼り付けた唄は、『自転車で逃げる』。
 歌詞は、こうだ。

 ♪やばい しばい オートバイ
 ちんけなうそ ばれた
 トゥートゥル トゥートゥル トゥートゥル トゥ
 とんぼのはね くわえて 
 すたこらさと にげる
 どいつも こいつも ぎぜんしゃ
 おれは どっこい じてんしゃ
 かんからかんの ちりりりりんさ
 ちりりりりんの あかちょこべーさ
 トゥートゥル トゥートゥル トゥ

 晩年の歌詞を読むと、「瞬間の王は死んだ」との雁氏の言葉は、「嘘じゃね」と体感している。
 平仮名に説得力があるし、だからこそ、ふと口ずさめる唄にしてくれたらと。

 どうか、今日もご無事で。


【追記/「さてっと」】
 思わず、森崎和江氏と上野千鶴子氏との対談を再読していた。
 森崎氏の抱えていた“運動と男女関係の齟齬の問題”は、何ひとつ、解決されていないなと。
 問題視さえされない正常化ばかりの現状は、相変わらずなのだった。
 佳き日々を。