深呼吸する言葉・ワナタベジンジンタロウ

おっさん中退・ジジイ見習い

2008-01-01から1年間の記事一覧

余情

物の乏しい時代に物を持とうとしなかった人と、 物の溢れる時代に物を持とうとしない人とでは、 何が違うのだろう、 いや、何が同じなのだろう。

秋の胸

「小さな胸を痛める」という 月並みな言葉を実感する事態に遭遇し、 老い始めし胸にも伝播す。 ふたり、胸を躍らせようと、秋の雲を眺める。

手の紙

黄ばんだ便箋に書かれた文字を読み終え、 封筒に入っていたときと同様に畳む。 そのとき感得できた、 懐かしき送り主の、 硬質な温もりを持つ手の動き。

現実と現実

何もないことによって、 実はある穴に、 雨が落ちていくのを眺めていた。 現実の比喩のごとき現実に 感じ入りながら。

低山病の時代/呼吸・11

低い場所で、 息も絶え絶えといった事態が続く中、 上へ登れば登るほど、 息がしやすくなるかのような言説が跋扈。 嘘、つけやい。

生と死・2

観終わった状態を想像し、映画観へは出向かない。 同様に、 普段、死ぬときを想像して生きているわけではない。 ただただ、 生と死は同じ場所で息づいているばかりだ。

秋日和/映画の発生・1

夜の手前、 1日のうちで 最も香ばしくも美しい光が、 地上に差し込む。 真に見逃せない映画が始まった。

壁は語る2008・13

下りも辛き加齢かな/硬い柔らかさ・柔らかい硬さこそ/組織的偶然と瞬間的必然と/おお勝手に風向きが変わったぜ/68年について語るな、68年として語れ/肩車されし子どもの見ていたものは?/何かさ秋だよね

壁は語る2008・12

箸がのびた先の生贄よ/水に浮くという体内の変身/伝えられてこなかった民話を聴き続けている/沈滞なる腐敗が進化中さ/あの時代感情の「何も言いたくない」には語るべきこと多し/打たれ強い虚弱体質なんだよな/

ラブレター

いっそ、 この上なき至福をもたらす、 極上の愛撫としての 批判・暴言・罵倒こそを。

楽しき我が家・2

テレビや電話、パソコン等々から伸びている多くのコード類。 我が家は、今どき「何だかな」のスパゲティ症候群。 どすこいっ!

家族内対抗歌合戦・1

低空飛行、飛んでいるだけまだよし。 地に顔つけ匍匐前進の日々に、 「いっそ冬眠できんかね。腹も減らぬ」とブルーズ歌えば、 「あら、そのカツ丼食べられないね」とプロテストソング。 そいつあ困った困った。

壁は語る2008・11

鯖、苦手なんだよね/無意味に耐えられない? その意味に耐えられないっす/何を読むかも大切だが、どう読むかのほうがもっと肝/あっちとこっち、今も/足音を聴きたい(ベンヤミンからのメール)/サバよむなよ/

神業

電車内で熟睡中の、口も脚も大きく開いて座る女性。少年たちが奇妙に笑う。 駅に到着する。手でつっと口を拭い、何事もなかったかのごとく席を立つ。 たった今、誕生したての彼女はホームで待つ彼の前へと進む。

月下の貧乏人・3

月を眺めながらの今、この場所で、流れ流れて、 唄のひとつで、現からはみ出していく。

壁は語る2008・10

なあんだ、創造的反動か/逃げていいさ、雪崩としての暴力だもの/肉好きの肉付き/快楽の保留は留保/断言するなと断言するしかない?/行き場所などないが、行こう、もう/音楽は単に聴くものでなく、成るものさ/

朝と朝

「問題まみれで答などない」という場所に、 もはや問題を感じず、 むしろ答とさえ思っている通勤電車内。 朝日が差し込み、ダンス&ダンス!

口笛の効用/空間のつかみ方/水百景・4

山頂に立てば、眼下に湖。 反射光の移動で、水面を走る風が見えた。 背後からは口笛。空を、飛行機雲のごとく撫でている。 そこで一挙に、だだっ広い空間をつかむことができた。

はじめの1歩/水百景・3

山道のコースは概ね決まっている。 水を一口含み、「さあて」と、歩行のインプロビゼーションを開始する。

紅葉事始め

携帯電話に圏外の表示。 一瞬慌てるものの、 指圧後と同様の、温かい心地よさがじわりと訪れた。 「紅葉の恵みかな」と呟きつつ、 山里にもシェルターなるルビをふることができるなと――。

声・2

断言の視野狭窄から遠い、 ふるえていて細く、 透き通っていて薄く、 弱々しくも美しい声を、 聞き取ろうとしているばかりだ。

何気ない一言/始原の詩歌・4

関係性の中で柔らかく作用する凡庸な日常的一言は、 発見に満ちた鋭い名言・格言などを簡単に超えている。

眼球運動・1/現場の詩歌・3

有能なカメラマンが生涯にわたり押したシャッター数。 遥かに多く、私たちは瞬きでシャッターを切る。 そうして、日々の、名作とは異なる、記録されないだろう、かけがえのない出来事を網膜に焼き付けていく。

唯物論者の弁・1/発生の詩歌・2

物々交換の世界は、母子のあやとり遊び、父子のキャッチボールなどにも確実に生き延びている。 そも、日々の、言葉の直接的やりとりがそうだ。

詩歌・1

詩歌の自給自足生活に舵をきったとしても、 もちろん市場には出かけるのだが。

壁は語る2008・9

赤面したが、顔にも血液が流れていた証拠さ/覚えておくよ、継続的沸騰こそ基本だと/「布団にダイブ」みたいな遊泳術を身につけようか/「母さん、心配しないでいいよ。いつもの戦争だから」の心意気?/よっしゃ/

壁は語る2008・8

無垢でない奴なら殺していいのか/非日常の日常化への誤謬、日常の非日常化への嘘/理想? 翻訳してよ/欧米にもあるらしいぜ、集団主義/とどのつまり精神主義者たちの合コンかあ/名作という実は傷/どすこいっ/

神様お願い2008・3

彼は再び旅立とうとしていた。 声をかける。 「どこまで?」 応えない。 すると背後に女性。 「なあんだ」 2人はそれぞれのオートバイに。 彼女が静かに走りだす。 彼が緩く追う。 行き先は彼女のみぞ知る。 空にも星々――。

生と死・1

テレビから高齢者の声が。 「若い彼の代わりに私が死ねばよかった」 過去、幾度か耳にした言葉だ。 画面に向かい呟く。 「いや、代わりに生きてよ」 そうして自分には、 「あの言葉、言えるか? 丸ごと」 そう問い始める。

サバイバル教程

反動にしろ変革を望む時勢だ。 安楽に窒息? 倦怠さえ貧血さ。 今もなお、すべてが無料ではない神不在の神国よ。 まばゆい光でできた鉄格子が増殖中だ。 魅惑の廃墟? ケッ、俺は今ここで、今ここを求め続けるだけさ。