2008-01-01から1年間の記事一覧
物の乏しい時代に物を持とうとしなかった人と、 物の溢れる時代に物を持とうとしない人とでは、 何が違うのだろう、 いや、何が同じなのだろう。
「小さな胸を痛める」という 月並みな言葉を実感する事態に遭遇し、 老い始めし胸にも伝播す。 ふたり、胸を躍らせようと、秋の雲を眺める。
黄ばんだ便箋に書かれた文字を読み終え、 封筒に入っていたときと同様に畳む。 そのとき感得できた、 懐かしき送り主の、 硬質な温もりを持つ手の動き。
何もないことによって、 実はある穴に、 雨が落ちていくのを眺めていた。 現実の比喩のごとき現実に 感じ入りながら。
低い場所で、 息も絶え絶えといった事態が続く中、 上へ登れば登るほど、 息がしやすくなるかのような言説が跋扈。 嘘、つけやい。
観終わった状態を想像し、映画観へは出向かない。 同様に、 普段、死ぬときを想像して生きているわけではない。 ただただ、 生と死は同じ場所で息づいているばかりだ。
夜の手前、 1日のうちで 最も香ばしくも美しい光が、 地上に差し込む。 真に見逃せない映画が始まった。
下りも辛き加齢かな/硬い柔らかさ・柔らかい硬さこそ/組織的偶然と瞬間的必然と/おお勝手に風向きが変わったぜ/68年について語るな、68年として語れ/肩車されし子どもの見ていたものは?/何かさ秋だよね
箸がのびた先の生贄よ/水に浮くという体内の変身/伝えられてこなかった民話を聴き続けている/沈滞なる腐敗が進化中さ/あの時代感情の「何も言いたくない」には語るべきこと多し/打たれ強い虚弱体質なんだよな/
いっそ、 この上なき至福をもたらす、 極上の愛撫としての 批判・暴言・罵倒こそを。
テレビや電話、パソコン等々から伸びている多くのコード類。 我が家は、今どき「何だかな」のスパゲティ症候群。 どすこいっ!
低空飛行、飛んでいるだけまだよし。 地に顔つけ匍匐前進の日々に、 「いっそ冬眠できんかね。腹も減らぬ」とブルーズ歌えば、 「あら、そのカツ丼食べられないね」とプロテストソング。 そいつあ困った困った。
鯖、苦手なんだよね/無意味に耐えられない? その意味に耐えられないっす/何を読むかも大切だが、どう読むかのほうがもっと肝/あっちとこっち、今も/足音を聴きたい(ベンヤミンからのメール)/サバよむなよ/
電車内で熟睡中の、口も脚も大きく開いて座る女性。少年たちが奇妙に笑う。 駅に到着する。手でつっと口を拭い、何事もなかったかのごとく席を立つ。 たった今、誕生したての彼女はホームで待つ彼の前へと進む。
月を眺めながらの今、この場所で、流れ流れて、 唄のひとつで、現からはみ出していく。
なあんだ、創造的反動か/逃げていいさ、雪崩としての暴力だもの/肉好きの肉付き/快楽の保留は留保/断言するなと断言するしかない?/行き場所などないが、行こう、もう/音楽は単に聴くものでなく、成るものさ/
「問題まみれで答などない」という場所に、 もはや問題を感じず、 むしろ答とさえ思っている通勤電車内。 朝日が差し込み、ダンス&ダンス!
山頂に立てば、眼下に湖。 反射光の移動で、水面を走る風が見えた。 背後からは口笛。空を、飛行機雲のごとく撫でている。 そこで一挙に、だだっ広い空間をつかむことができた。
山道のコースは概ね決まっている。 水を一口含み、「さあて」と、歩行のインプロビゼーションを開始する。
携帯電話に圏外の表示。 一瞬慌てるものの、 指圧後と同様の、温かい心地よさがじわりと訪れた。 「紅葉の恵みかな」と呟きつつ、 山里にもシェルターなるルビをふることができるなと――。
断言の視野狭窄から遠い、 ふるえていて細く、 透き通っていて薄く、 弱々しくも美しい声を、 聞き取ろうとしているばかりだ。
関係性の中で柔らかく作用する凡庸な日常的一言は、 発見に満ちた鋭い名言・格言などを簡単に超えている。
有能なカメラマンが生涯にわたり押したシャッター数。 遥かに多く、私たちは瞬きでシャッターを切る。 そうして、日々の、名作とは異なる、記録されないだろう、かけがえのない出来事を網膜に焼き付けていく。
物々交換の世界は、母子のあやとり遊び、父子のキャッチボールなどにも確実に生き延びている。 そも、日々の、言葉の直接的やりとりがそうだ。
詩歌の自給自足生活に舵をきったとしても、 もちろん市場には出かけるのだが。
赤面したが、顔にも血液が流れていた証拠さ/覚えておくよ、継続的沸騰こそ基本だと/「布団にダイブ」みたいな遊泳術を身につけようか/「母さん、心配しないでいいよ。いつもの戦争だから」の心意気?/よっしゃ/
無垢でない奴なら殺していいのか/非日常の日常化への誤謬、日常の非日常化への嘘/理想? 翻訳してよ/欧米にもあるらしいぜ、集団主義/とどのつまり精神主義者たちの合コンかあ/名作という実は傷/どすこいっ/
彼は再び旅立とうとしていた。 声をかける。 「どこまで?」 応えない。 すると背後に女性。 「なあんだ」 2人はそれぞれのオートバイに。 彼女が静かに走りだす。 彼が緩く追う。 行き先は彼女のみぞ知る。 空にも星々――。
テレビから高齢者の声が。 「若い彼の代わりに私が死ねばよかった」 過去、幾度か耳にした言葉だ。 画面に向かい呟く。 「いや、代わりに生きてよ」 そうして自分には、 「あの言葉、言えるか? 丸ごと」 そう問い始める。
反動にしろ変革を望む時勢だ。 安楽に窒息? 倦怠さえ貧血さ。 今もなお、すべてが無料ではない神不在の神国よ。 まばゆい光でできた鉄格子が増殖中だ。 魅惑の廃墟? ケッ、俺は今ここで、今ここを求め続けるだけさ。