わたしが知っていることは、特にない。
強いて言えば、わたしのことぐらい?
それさえ覚束ないものだ。
となれば、他者のことなど、どれほど分かっているのか。
分からないといった場所から始めるしかない毎日。
【目を閉じる場所/今日も少しだけ】
電車に乗る。
運よく座すことができた。
そこへ、杖をついた人が乗り込んできた。
白髪のわたしの前に立つことは避けて、優先席のほうへ。
一斉に目を閉じる人々。
何と、老いた人でさえ。
「あはは」
杖をつく人は、杖で床を打ち鳴らす。
が、誰も目を開けようとはしない。
熟睡感を放っている。
杖の人は、場所を移動していく。
すると、都合よく、若い女性が席を立つ。
譲った風でもなく。
優先席のほうをうかがう。
すると、熟睡していた人は、すでにスマホをいじっていた。
どうか、今日も、ご無事で。
【追記/「あらま」】
ひえええっ。
「また通うのか」
歯の調子が悪いのだった。
佳き今日を。